筆者はあちこちの大学でゲームデザインを教えているが、テクノロジーの知識やプログラミング経験がゼロという学生が結構いる。授業ではまず、インタラクティブ・フィクション(IF:別名テキストアドベンチャー)を作成できるオープンソースプラットフォームのTwineを紹介している。Twineは無料で使いやすく、学生が楽しくゲーム制作を始められるツールだ。
Twineはまた、未成年にも最適だ。楽しくストーリーテリングに挑戦するアクティビティも可能だし、プログラミングの基本概念を紹介するツールとしても使える。
インタラクティブ・フィクションは、主にテキストを使ったゲームジャンルで、プレイヤーは、ストーリーを読んでさまざまな選択肢をクリックし、ストーリーに関わりながら読み進めていく。Twineはもともとライター向けにデザインされたツールで、初めてのゲームを5分足らずで制作できるほど簡単だ。
クリエーターたちはTwineで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックから、ファンタジーの登場人物同士の恋愛まで、多種多様なトピックのゲームを制作している。可能性は無限大で、何よりも大事なのは、グラフィックスや視覚効果ではなく、物語を語ることだ。
Twineは2009年の誕生以来、インディーゲーム業界で人気を集めてきた。しかしインタラクティブ・フィクションは、ゲーム史において不可欠な存在だ。ウィル・クラウザーが1975年に制作した『コロッサル・ケーブ・アドベンチャー』は、世界初のインタラクティブ・フィクションとして広く知られており、アドベンチャー系ビデオゲームとパズルゲーム人気の土台を築いたゲームだ。クラウザーがこのゲームを制作した理由の一つは、妻との離婚直後、幼い子ども2人と気持ちを通じ合わせるためだった。
創作活動に取り組んで物語を構築していくことがメンタルヘルスとウェルビーイングの改善に役立つことは、多くの研究で明らかになっている。筆者も、担当しているゲームデザインコースで、学生たちが時間と労力をたくさんつぎ込んでゲームを完成させ、それをクラスメートや親、兄弟姉妹、ルームメイトなどと一緒に楽しむ様子を目にすると、本当に感無量だ。
学生の多くは、うつや不安、喪失といった個人的な体験を克服し、共有するための場として、ゲームを活用している。Twineは、学生が自らのストーリーを語ることができる場だ。たとえ体験を打ち明けられるほど心の準備ができていない場合でも、Twineを使えばそれが可能になる。
Twineでゲームを制作(またはプレイ)しているあいだは、厳密に言えば、パソコン画面を見ているスクリーンタイムにカウントされる。しかし、このスクリーンタイムには目的があり、創造的で、協力しながら過ごす時間だ。