同社は、この違法なデータベースを利用して、警察などの法執行機関に画像内の人物を特定できる顔認識サービスを販売しているとオランダの当局は述べている。クリアビューAIは、人々の同意を得ず、また彼らがその写真や生体データの使用を認識していない状態で、インターネットから写真を収集していると指摘された。
オランダの当局は、米国のクリアビューAIに「十分な透明性がなく」「そもそもこのデータベースを構築すべきではなかった」とし、コンプライアンス違反で最大500万ユーロ(約8億円)の追加の罰金を科すとしている。
クリアビューAIの最高法務責任者を務めるジャック・マルケアは声明で、「この決定は違法で、適正な手続きが欠如しており、執行不可能だ」と述べた。また、同社がオランダやEUに事業所や顧客を持たず、「GDPR(EU一般データ保護規則)の対象となる活動を行っていない」と付け加えた。
クリアビューAIは、GDPRに違反したとして、イタリアやギリシャ、フランスの監視機関から2000万ユーロ(約32億円)を超える罰金を含む複数回の制裁を受けており、同社のテクノロジーは、ドイツやオーストリアの当局からも違法だと判断されている。
同社は英国の情報コミッショナーオフィス(ICO)からも約900万ドル(約13億円)の罰金を科されたが、ICOは外国の法執行機関による英国人のデータの利用に異議を申し立てるための権限を持たないとクリアビューAIは主張し、この罰金を回避することに成功していた。
オランダの規制当局も、欧州に拠点を持たない米国企業であるクリアビューAIを取り締まることが難しいと認めているものの、それでも同社のサービスを利用する者には「高額な罰金が科される可能性がある」と考えている。数々の執行措置にもかかわらず、同社が「その行動を改める気配がない」と当局は述べ、違反を止めさせるために、今後は会社の役員個人の責任を追及する可能性を検討しているという。
「500億件」の顔画像のライブラリ
クリアビューAIのCEOであるホアン・トン・ザットは、同社の顔画像ライブラリがすでに400億件に達し、地球上のすべての人の5枚の画像を保有するのに等しい量に達していると2023年のタイム誌のインタビューで述べていた。また、6月にはニュースサイトのBiometric Updateに対し、同データベースが500億件に成長したと語っていた。クリアビューAIは、2017年にペイパルやパランティアを共同創業したピーター・ティールなどの投資家の支援を受けて設立された。同社は、米連邦捜査局(FBI)や米国移民・関税執行局(ICE)などの広範な政府機関にサービスを提供していたが、その大規模な運営実態が2020年のニューヨーク・タイムズ紙の調査で明らかにされ、「不気味」で「ディストピア的」だと形容されたことで、評判は急落した。
顔認識テクノロジーは、米国の一部の都市で禁止されているにもかかわらず、警察などによるクリアビューAIの使用は減少していない模様だ。トン・ザットCEOは6月のBiometric Updateの記事で、法執行機関による同社のテクノロジーを用いた検索が過去1年で2倍に増加し、200万件に達したと述べていた。
(forbes.com 原文)