気候・環境

2024.08.23 16:53

「藻類×アクアポニックス」への挑戦 ゼネコンが始めた三方よしの仲間集め

熊谷組新事業開発本部の藤井亮、ヤンマーアグリジャパン九州支社アグリプラント部の長山雄一、三菱化工機アドバンス プラント環境営業部の増田吉兼、ひらやま代表取締役の平山正(写真左から)

熊谷組新事業開発本部の藤井亮、ヤンマーアグリジャパン九州支社アグリプラント部の長山雄一、三菱化工機アドバンス プラント環境営業部の増田吉兼、ひらやま代表取締役の平山正(写真左から)

日本から世界に誇れる共創プロジェクトに光を当てる、2回目の「Xtrepreneur AWARD 2024」。8月23日に発売した『Forbes JAPAN』2024年10月号で6つの受賞プロジェクトを発表した。

GX/カーボンニュートラル部門には、CCU活用による環境保全型ハイブリッド農業「 藻類 X アクアポニックス」プロジェクトが選出された。熊谷組、ひらやま、三菱化工機アドバンス、ヤンマーアグリジャパンなどが手を組み、実現させたものだ。

異なるカルチャーの組織が手を組み、1 社では成しえなかったインパクトを世の中に起こしていく──挑戦者たちの物語を紹介しよう。

微細藻類の培養を行う「藻類フォトバイオリアクター」(熊谷組提供)

微細藻類の培養を行う「藻類フォトバイオリアクター」(熊谷組提供)

化石燃料にかわるバイオマスとして期待される微細藻類。医療から食品まで多様な活用も見込まれ、世界の市場は2023年に107億5000万ドルまで拡大している。この市場に挑むのが熊谷組だ。

7年前から技術研究所で独自藻類株を研究するが、なぜゼネコンが藻類なのか。新事業創出プロジェクト推進グループ課長の藤井亮は「コア事業にとらわれずに研究できる環境があり、藻類研究に明るい女性研究員が有用な独自株を発見。一次産業化する道を模索していました」と明かす。

社会にインパクトをもたらすため考えたのが「藻類×アクアポニックス」だ。

ビジネスに強い座組みをつくる

魚の陸上養殖と野菜の水耕栽培を、水を循環させながら同時に行うアクアポニックス。養殖魚の排泄物をバクテリアが栄養素に分解するため、野菜が肥料不要で早く育つ。この循環に藻類培養を加え、魚、藻類、野菜を高効率・高品質で生産することを目論んだ。問題は藻類培養以外のノウハウだ。熊谷組は佐賀市の「さが藻類バイオマス協議会」に参画し、仲間探しに着手。アクアポニックスは、サーモン養殖で実績のあるひらやまの平山正から提案を受けた。

「藻類はバクテリアが分解しきれなかった菌も分解してくれる。それがまたいけすに戻るから、通常のアクアポニックスより臭みのないサーモンができるとピンときました」(平山)。

陸上養殖を行ういけす(熊谷組提供)

陸上養殖を行ういけす(熊谷組提供)

さらに藻類培養システムは三菱化工機アドバンスの増田吉兼、アクアポニックスラボのガス空調管理システムはヤンマーアグリジャパン九州支社の長山雄一など強力な味方を引き入れて座組みをつくった。さらに施設を佐賀市ごみ焼却施設の隣に設置。排ガスからCO2を分離回収するCCUプラントからパイプラインを引き、藻類に供給することで安定・大量生産に挑む。

「最初からSDGsを掲げていたら、きっといい座組みはできなかった。ビジネス化を狙って強い武器をもつ仲間を集めたからこそ実現できた」(藤井)。今後は各地で10施設まで拡大運用を進め、将来的にシステムを外販する。顧客は廃校・廃工場などをもつ行政や企業などを想定し、30年まで100施設年間売り上げ60億円を果敢に目指す。


藤井亮◎熊谷組新事業開発本部新事業企画推進部新事業創出プロジェクト推進グループ課長。農業機械業界を経て2023年より現職。

平山正◎ひらやま代表取締役。熊本県八代市で1997年に有限会社として設立。ひらやま式陸上養殖システムは特許申請済み。

増田吉兼◎三菱化工機アドバンス(神奈川県川崎市)プラント環境営業部プラント環境営業課主事兼開発チームリーダー。

長山雄一◎ヤンマーアグリジャパン九州支社アグリプラント部主任。2級施工管理技士(建築・管)、土づくりアドバイザー。

文=村上 敬 写真=小田駿一

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