サービス

2024.08.06 18:00

行方不明のヘンリー8世の肖像画、SNSの投稿写真で発見される

Getty Images

映画『インディ・ジョーンズ』に出てくる架空の考古学者ヘンリー・"インディアナ"・ジョーンズ博士は教え子らに「考古学の70%は図書館で行われる。調査と読書だ」と語った。もちろん、パソコンやタブレット、最近ではスマホで調査ができるインターネット時代の前ならそうだった。

長い間行方不明になっていたイングランド国王ヘンリー8世の肖像画が、ソーシャルメディアに投稿された写真の中にあることを美術史家が発見したと、欧州の放送局ユーロニュースがこのほど報じた。

「競売会社サザビーズのコンサルタントである美術史家のアダム・ブシアキエヴィッチは7月4日に、英ウォリックシャーの統監がX(旧ツイッター)に投稿した写真の背景に、思いがけず(ヘンリー8世の)絵があることに気づいた」と報道にはある。また、投稿された写真はこの絵がもともと飾られていたウェストン・ハウスからわずか約22キロメートルしか離れていない、ウォリックにある建物シャイア・ホールでの集まりを写したものだったと報じている。

ウォリックシャー統監の投稿には「統監大使のみなさんや副統監に、ウォリックシャー各地での日頃の取り組みに感謝の意を伝えるレセプションを開催することをうれしく思う」とあり、行方不明の肖像画が所蔵されていることを知らなかったようだ。


ソーシャルメディアの貢献

この絵はもともと、1590年代に英国のタペストリー職人ラルフ・シェルドンに依頼された全22枚のうちの1枚だった。そのうちの何点かは現在、ロンドンの美術館ナショナル・ポートレート・ギャラリーや名門学校イートン・カレッジ、歴史的な大邸宅のネブワース・ハウスにあるが、多くは行方不明のままだ。

おそらくソーシャルメディアは、依然として行方がわからない肖像画や、紛失したり盗まれたりした絵画を見つけ出すのに役立つだろう。

「ソーシャルメディアを通じて『失われていた』ヘンリー8世の肖像画が発見されたことで、美術品を回収・特定できるかもしれないすばらしい可能性が生まれた」と、美術品の評価査定などを行う米ニューヨークの会社の代表を務めるケリー・カーンは指摘する。

「重要な美術品の所有者や所在を追跡する中央データベースがないことを考えると、ソーシャルメディアの広大なリーチは、行方がわからなくなった作品の所在を突き止める新たな機会となる」とカーンはいう。「TikTokやインスタグラム、フェイスブック、Xは本質的に、視覚情報を扱う膨大でグローバルなカタログとして機能している」

現代のテクノロジーのおかげで、忘れられたり行方不明となったりした美術品の発見はこれまで以上に容易になっている。そのテクノロジーの中にはソーシャルメディアも含まれる。
次ページ > 絵を見分ける訓練と経験を積んだ人が、絵が背景に現れた瞬間に見ていることも肝心

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事