2021年に当時19歳だったアディット・パリチャとカイヴァリヤ・ヴォーラの2人が立ち上げた同社は、食料品から玩具まであらゆる商品を10分で届けるデリバリーサービスとして、インド最大のクイックコマース企業の1社に成長した。2人は、スタンフォード大学への進学をとりやめた後、スタートアップアクセラレーターのYコンビネータに参加していた。
2022年にフォーブスの『30 UNDER 30』のアジア版に選出された2人が設立したゼプトは今、流通総額でインド第3位のクイックコマース企業に成長した。4万人のデリバリー・パートナーを通じて10都市で1日50万点の商品を配送している。
ゼプトにとって次の課題は、主要なライバルであるBlinkit(ブリンキット)とInstamart(インスタマート)の市場に食い込むことだ。「最も困難な課題は、厳しさを維持し続けることだ」と、同社の最高技術責任者(CTO)を務めるヴォーラは言う。
ムンバイに拠点を置く同社が6月に発表したシリーズFラウンドは、Glade BrookとNexus、StepStone Groupらが共同で主導し、AvenirやLightspeedらが参加した。また、Yコンビネータの投資会社であるYC Continuityの元トップ、アヌ・ハリハランが新たに設立したファンドのAvraも参加した。累計調達額が12億ドル(約1787億円)を突破したゼプトは、今後の18〜24カ月で新規株式公開(IPO)を目指している。
ドイツのデータ会社Statistaは、インドにおけるクイックコマースの市場規模が今年の33億ドル(約5270億円)から2029年には100億ドル(約1兆6000億円)に拡大すると予想している。CEOのパリチャによると、ゼプトの今年3月末までの1年間の売上高は、前年比150%増の506億ルピー(約972億円)に達する見込みという。同社は昨年、127億ルピー(約244億円)の損失を計上したが、今後の数カ月で初の営業黒字の達成を見込んでいる。
コロナ禍の中で起業
小学3年生のときにドバイで出会ったパリチャとヴォーラは、2020年にスタンフォード大学に合格し、コンピュータサイエンスを専攻する予定だったが、パンデミックのためにすべての授業がバーチャル化されたことを受け、ギャップイヤー(休学期間)を申請した。ムンバイ郊外のアンデリにあるヴォーラの実家に滞在していた2人は、近所の高齢者たちが日用品の調達に苦労していることに気付き、キラナと呼ばれる零細商店の商品を宅配するサービスを立ち上げようと思い立った。彼らは、3カ月間に渡って毎日ムンバイにある店舗を回ってアプリを売り込み、商品や在庫管理、需要予測、配達遅延などについて貴重な教訓を得た。「両親は、起業などせずに大学に進んでほしいと考えていた」とヴォーラは当時を振り返る。