気候・環境

2024.08.01 08:15

南米の都市づくりに学ぶ「ネイチャーポジティブ」の進め方

不動産、エネルギー、モビリティ、商業などにおける官民連携の強化は、都市が実施するその規模に見合った取り組みに役立つと考えられます。最近、ある市長グループが指摘したように、こうした連携は、ネイチャーポジティブなプロジェクトへの資金提供や実施だけでなく、移行を加速させるために必要な技術的専門知識など、その他の資源を得ることにも役立ちます。

首長は、地域の政策や規制の枠組みを、国家戦略や国際的な気候変動や生物多様性の目標につなげる必要があります。そうすることで、進捗状況を示し、モントリオール協定やパリ協定への都市の貢献を示すことができるのです。

最後に、地方自治体は、自然生息地の破壊を可能にした政策の失敗に対処することが強く求められています。各国政府には、自然を意識したイノベーションを妨げてきた公共調達におけるこれまでの失敗を正す努力が必要でしょう。持続不可能な慣行にインセンティブを与え、取引当事者以外に負担を強いている外部不経済な補助金制度を改革し、環境破壊があれば当事者に対価を支払わせることで正しい方向に導くべきです。

先駆者たちから学ぶ教訓

政策におけるイノベーションがネイチャーポジティブな都市への移行を推進する原動力となる一方で、私たちは先駆的な都市の経験を活用しなければなりません。「ネイチャーポジティブな都市」は比較的新しい概念であるため、私たちには適応と学習意欲が必要です。

都市の緑地を増やし、改善することがネイチャーポジティブな都市への転換を促進する鍵となります。野心的なステップを踏み出し、数値に表すことのできる成果を上げた都市の例をご紹介しましょう。2012年から2015年まで私が市長を務めたモンテリア市の行政は、政策立案者、企業、ステークホルダーと協力してサステナブルな都市づくりを行い、市内のシヌ川を社会的、文化的、経済的発展の軸へと変革しました。

政策立案と都市計画は、周囲の生態系に対する理解に根ざしたものにする必要があります。私がリーダーとなり、同市は「モンテリア2032」を策定。この20年計画では、同市を川と人々に還すことを目指しています。この計画の根幹にあったものは、シヌ川を活性化させることが、公共空間、水管理、基本的衛生、観光を取り戻すために不可欠であるという理解でした。

モンテリア市は、政策決定において自然を前面に打ち出し、目覚ましい好転に向けた舞台を整えました。近年、同市は50の都市公園と農村公園を回復し、ロンダ・デル・シヌ公園を拡張しました。この公園は、2017年に保護区に指定されています。

コロンビアの他の都市の例としては、バランキージャがあります。同市は、世界経済フォーラムの「2030年までのバイオダイバーシティ(BiodiverCities by 2030)」イニシアチブに参加するラテンアメリカの120都市の一つであり、「建築環境、社会構造、自然資本が調和して共存する」未来の創造を目指しています。また、より良い未来への基盤を築く、複数のブルー/グリーンインフラ・プロジェクトにも取り組んでいます。
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文=Carlos Correa Escaf, Former Minister of Environment and Sustainability, Colombian Government

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