北米

2024.07.24 09:30

弱いドルは「第2次トランプ政権」を立ち行かなくする 金価格が灯す黄信号

Christopher Sciacca / Shutterstock.com

経済成長は投資によって促進される。話はそれに尽きる。これは直感的に理解できるだろう。企業や個人はよく市場で資金を調達し、その資金を投じて、これまでなかった優れた製品やサービスを投入したり、すでにある製品やサービスをもっと大量に、より安く生産したりしている。

これはさらに、経済成長をめぐる重要な事実を2つ思い出させてくれる。ひとつは、経済学者の見解に反して、経済成長は消費によってもたらされるわけではないということ。消費は生産に続いて起こるものであり、その生産は生産者と投資が結びついた結果である。もうひとつは、経済が成長している場合、成長の最も確かな兆候は(これも経済学者の見方とは逆に)、以前は高価だったさまざまな製品やサービスの価格が下落してくることだ。

これらは、次期米大統領の座を共和党の指名候補ドナルド・トランプ前大統領と民主党の候補らが争うなかで留意しておきたい点だ。このところドルは、金(ゴールド)のような客観的な商品に対して史上最安値を試し続けている。金が好きか嫌いかは別として、次の歴史的真実を否定できる人はいないだろう。金価格の動向は金自体についてはほとんど何も語らないが、その価格を表示している通貨についてはすべてを語っている、ということだ。そして、金の価格をドルで表示してみれば、ドルの価値が急激に下がっていることは一目瞭然だ。

本記事のタイトルに「トランプ」が入っているのには理由がある。金価格は、トランプが再選された場合に何が待ち受けているかについて警告を発していると考えられる。トランプに近い人々(とくに前政権で国家経済会議議長を努めたラリー・クドロー)は、トランプの成功を望むのであれば本人に忠告したほうがよいだろう。

比較のために1979年ごろの状況を振り返ってみよう。同年から1980年初めにかけて金価格は急騰し、1980年1月には当時の史上最高値である1トロイオンス875ドルをつけた。

この金高騰は、当時のポール・ボルカー米連邦準備制度理事会(FRB)議長(民主党のジミー・カーター大統領の指名で1979年8月に就任した)の政策がインフレ(編集注:著者はインフレを「通貨価値の下落」という意味に力点を置いて用いている)を抑制したという歴史的な通念を否定しているが、それよりもっと重要なのは、FRBの金融政策だけではインフレを抑制できないということを思い出させるものになっている点だ。

そもそも、ドルの交換価値(為替レート)の管理がFRBの主要な政策に含まれたことは一度もない。ドル安に対してはカーターとマイケル・ブルーメンソール財務長官、後任のウィリアム・ミラー財務長官の政府も財政政策などを実施しており、1979〜80年には市場もそれに反応した。
次ページ > 市場は「第2次トランプ政権」のドル安志向を織り込みつつある

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事