北米

2024.07.24 09:30

弱いドルは「第2次トランプ政権」を立ち行かなくする 金価格が灯す黄信号

Christopher Sciacca / Shutterstock.com

1980年初めまで金に対して急落していたドルは反騰に転じる。これは明らかに、同年11月の大統領選に向けて、共和党のロナルド・レーガンの勝利を市場が織り込んだことを示す最初期の動きだった。レーガンは1980年2月下旬のニューハンプシャー州予備選を制している。
advertisement

レーガンは強いドルの復活を公約に掲げ、ドルの価値を安定させる方策として金本位制への復帰も検討する考えを示していた。ドルは政権の意向に左右されるので、「レーガン政権」誕生の可能性の高まりを映して金価格は急激に下がり始めた。レーガンの当選翌日には、ドルはさらに急騰した。

前に述べたとおり、ドルは現在、当時と反対に金などに対して下落している。ここで推測されるのは、トランプ勝利の確率の高まりが無視できない要因になっているということだ。トランプ政権で米通商代表部(USTR)代表を努め、第2次政権で財務長官候補のひとりと目されているロバート・ライトハイザーをはじめ、トランプに近いアドバイザーらはドル安を好んでいることが知られている。

ドルの価値の下落に歯止めをかけなければ、米国の成長を下押しすることになるだろう。経済成長は投資が原動力となり、弱いドルは投資を減退させるからだ。ドルの保有者たちには選択肢があるということを忘れてはならない。ドルが急落しているときに、彼らがドルでのリターンを求めて投資すると考えるのは非現実的だ。
advertisement

単純な真実はこうだ。投資は、ドルが軟調なときには、すでに存在する富を代表するインフレヘッジ資産(住宅や美術品、切手、市況商品など)の消費(購入)に向かいやすい。反対に、ドルが堅調なときには、まだ存在しない富の創出を代表する株式や債券などの収益源に向かいやすい。インフレヘッジ資産の購入は現状維持を具現化するものであり、株式や債券への投資はより良い未来に向けた動きだ。基本的なことである。

1980年が参考になるとすれば、市場は第2次トランプ政権が発足し、ドルの価値をさらに下げる立場をとることを織り込みつつあると考えられる。大統領は多くの失敗に耐えられるものだが、ドル切り下げの結果である相対的な投資不足は致命傷になる。この点は注視していく必要がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事