この気象情報を発表した英エジンバラ大学主導の研究チームは、12日に科学観測開始2周年を迎えたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いて、2つの褐色矮星が発する熱(赤外線放射)を観測した。2つは知られている中で太陽系の最も近くに位置する褐色矮星で、木星の30~35倍の質量を持つ。過去の研究では、褐色矮星が放射する赤外線の明るさ(光度)が時間と共に増減することにより、異なる速度で回転する濃淡のある雲の存在が示唆されていた。
光度の変化
研究チームは、WISE 1049ABの表面で雲の多い領域と少ない領域が回転して観測視野に出入りするのに伴って変化する光度を測定し、それぞれの大気の状態の時間変化を追跡調査した。今回の研究をまとめた論文は、英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載された。この観測データを可視化することで、褐色矮星WISE 1049AとBの1日(それぞれ約7時間と5時間)における天気(大気の状態)の時間変化の様子を3次元的に表した図を作成。さらに、水蒸気、メタン、一酸化炭素などのガスが大気中に存在し、相互作用している痕跡を発見することに成功した。恒星になれなかった天体
褐色矮星は、宇宙で他に類を見ないタイプの天体だ。巨大ガス惑星と小型の恒星の隙間を埋める存在であり、「恒星になれなかった天体」と呼ばれることが多い。質量が小さすぎるため(恒星の中心核で起きる)水素がヘリウムに変わる核融合反応を起こせないからだ。誕生当初は重力収縮エネルギーの熱と、より低温で起きる重水素などの核融合で輝くが、やがて冷えて暗くなっていく。論文の筆頭執筆者で、エジンバラ大の天文学者のベス・ビラーは「太陽系外のはるか彼方にある天体に関する理解の変革がまさに起きようとしていることを、今回の研究は示している」と指摘する。「こうした知見は、褐色矮星のような天体だけでなく、巨大な太陽系外惑星についても、気象を理解する助けになる可能性がある」
また、太陽以外の恒星を公転している生命居住可能な系外惑星の、いまだ謎に包まれている気象状態に関しても、今回と同様の技術が解明の助けになるかもしれない。
(forbes.com 原文)