これまでに発見されている太陽系外惑星は5000個を超えているが、詳細に観測できるほど近くにあるものは比較的少ない。くじら座の方向に地球からわずか約48光年の距離にあるLHS 1140 bは、直径が地球の1.7倍だ。
今回の発見により、LHS 1140 bは太陽系外での液体水の探索において、これまでで最も有望な系外惑星の1つとなっている。
最も有望
スペクトル型がM型の赤色矮星のトランジット法による系外惑星探査に特化したMEarthプロジェクトで2017年に発見されたLHS 1140 bは、ガスが主成分のミニ海王星型か、岩石質の地球型かのどちらなのかが明確にわかっていなかった。だが、今回の研究をまとめた論文によると、2023年12月にJWSTで収集した観測データを分析した結果、LHS 1140 bは、大気があり、液体水の海を持つ可能性もあることが明らかになった。論文は天文学誌The Astrophysical Journal Lettersに10日付で掲載された。論文の筆頭執筆者で、カナダ・モントリオール大学の博士課程学生のシャルル・カデューは「太陽系外惑星の表面に液体水が存在することの間接的な裏付けを得るためには、現在知られている全ての温暖な系外惑星の中で、LHS 1140 bが最も有望である可能性が高い」と指摘している。「これは、生命生存可能な系外惑星探査における重大な節目となるだろう」
氷、雪、水
研究チームは全質量の10~20%が水と推定しているが、LHS 1140 bは全体が氷に覆われたスノーボール(全球凍結)状態の氷惑星かもしれない。地球を公転する月と同様に、LHS 1140 bは主星に対して潮汐ロック状態にあり、常に主星に同じ面を向けて公転しているため、常に昼の側に液体の海が存在している可能性がある。もしそうなっていれば、大西洋の約半分に相当する表面積を持つ、直径約4000kmの海が広がっているかもしれない。この海の中央部分の表面は、快適な温度の20度になっている可能性があると考えられている。
ハビタブルゾーン
LHS 1140 bは、質量が地球の約7倍のスーパーアース(巨大地球型惑星)で、天の川銀河(銀河系)に最も多く存在する種類の恒星の1つである赤色矮星を公転している。赤色矮星は太陽に比べてはるかに小さくて暗く、LHS 1140 bの主星も太陽の5分の1の大きさしかない。公転周期がわずか25日と主星の非常に近くを公転しているが、主星がとても暗いため、表面温度はそれほど高くならない。ちなみにNASAによれば、水星の公転周期は88日で、表面温度は灼熱の430度に達する。LHS 1140 bは、軌道が主星の周囲のハビタブルゾーン(生命生存可能領域)内にあり、水が液体で存在できる距離に位置している。これが極めて重要になるのは、水が生命にとって不可欠と考えられているからだ。赤色矮星は、生命にとって致命的な放射線を軌道上の惑星に浴びせる、有害なフレア(表面での爆発現象)を頻繁に発生させる傾向があるが、主星のLHS 1140にはその傾向はみられない。