住友林業は、脳機能解析サービスなどを展開するスタートアップBrainEnergy、東京慈恵会医科大学と共同で、「木の心理療法室」の、うつ病患者の心理療法における補助的な効果の有無を研究しているが、臨床試験により、木質化した環境での木の香りが患者の好印象につながり、「うつ病の治療を導入・継続していく上での後押しとして有効であることが示唆」されたという。
臨床試験では、うつ病性障害患者20人を10人ずつ2つのグループに分けて、木質化した心理療法室と、通常の心理療法室とで16週にわたり認知行動療法を受けさせた。効果の検証には、専門医が治療効果の判断に用いているハミルトンうつ病評価尺度と、NIRS(近赤外分光法)による脳機能の測定などが用いられた。
ハミルトンうつ病評価尺度には17の評価項目があるが、そのうちの抑うつ気分、罪悪感、入眠困難、食思不振、心気症の5つでは、どちらの部屋でも同様に心理行動療法の効果が認められた。NIRSでも大きな差はなかったが、香りの好ましさでは違いが現れ、抑うつや不安の度合いが高い人ほど香りの好ましさを強く感じていた。ただし、快適さ、温度、空間、明るさの各項目では、木の心理療法室と通常の心理療法室との差は見られなかった。
近年では自然とのつながりを重視した建築デザイン手法である「バイオフィリックデザイン」が注目され、オフィスなどにも自然を感じさせる木材を使うなどの工夫が取り入れられるようになったが、今回の検証で、抑うつや不安を感じる人ほど木の香りを心地いいと感じることがわかった。いい匂いを嗅ぐと気分が落ち着くものだ。ストレスが気になる人は、木の香りを試してみてはどうだろう。
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