ヘルスケア

2024.07.08 15:00

男性のつわり、「クーヴァード症候群」とは何か

意外に感じるかもしれないが、妊娠に関わる困難には夫も直面することがある(Getty Images)

意外に感じるかもしれないが、妊娠に関わる困難には夫も直面することがある(Getty Images)

クーヴァード症候群とは、妊婦の夫がパートナーの妊娠をきっかけにして妊娠に似た症状を経験することを指す。この疾患は心因性のものだが、さまざまな身体的、精神的な症状を発症させ、日常生活や健康状態に深刻な影響を及ぼす。

よく見られる症状として、吐き気、体重の増加、気分変動、および腰痛、頭痛などの身体的不快感がある。睡眠障害、食欲の変化、稀な例では陣痛のような痛みも報告されており、妊婦の夫とパートナーの心理的つながりの強さが顕著に現れている。

クーヴァード症候群は、心理的、社会的な要因が組み合わさった結果だと考えられている。たとえば妊娠したパートナーとの感情的なつながり、父親としての社会的な期待、あるいはホルモンの変動(コルチゾールやテストステロン濃度の変化など)などが症状の出現に寄与している可能性が高い。

その結果、妊婦の夫は、子育てや経済的な心配、あるいはパートナーと赤ん坊の健康に関する心配のために、気分の変動や感情の高まりを経験することがある。こうした変化の期間には、パートナー同士の心を開いた会話と相互の助け合いがきわめて重要になる。妊娠に似た症状を経験している男性を支援することで、両パートナーの痛みを和らげることができる。そのための方法を3つ紹介しよう。

1)父親の役割を支援するプログラム

『父親の役割を支援するプログラム(fatherhood mentorship program)』では、妊婦の夫を子供を持った経験のある父親とペアにして、指導や助言、支援を受けさせることで、親になることへの新しく、時には圧倒される旅を進んでいく手助けをするものだ。定例的なミーティングや話し合いを通じて、支援者は自分たちの経験を分かち合い、実践的な助言や精神的な支援を受けることができる。このつながりによって、妊婦の夫は準備ができていることを実感し、孤独感をやわらげることが可能だ。

メンター(助言者)とのマッチングでは、妊婦の夫との共通する興味、経歴、特定のニーズなどに基づいて注意深くペアが作られる。この個人に合わせたペアリングによって、メンターは実践的で有意義なサポートを提供できる。次に、定例ミーティングのスケジュールが決められる。ミーティングは対面、リモート、あるいは両方の組み合わせによって行われ、妊婦の夫が心配事について話し、質問し、フィードバックをもらうための一貫した信頼できる場が提供される。ミーティングでは出産の準備、新生児の世話、パートナーのサポート、家事の分担などに関する幅広い話題がカバーされる。

共感と安心感を与えて情緒的ストレスを軽減することに加えて、メンターは自身の体験に基づく実践的なアドバイスやヒントも提供する。このガイダンスによって、妊婦の夫は自信と覚悟を深め、父親への移行がよりスムーズになり、力強いサポートを受けることができる。

2)創造的表現のワークショップ

『創造的表現のワークショップ(Creative Expression Workshops)』は、妊婦の夫がまもなく父親になることに関わる情緒的および心理的な側面を乗り越える手助けをする。このワークショップでは、未来の父親たちが様々な形の芸術、執筆、音楽、あるいはその他の創造的活動を通じて、自分の考えや不安、体験などを探求するための環境を提供する。

経験豊富なメンターによる指導の下で、絵画、線画、日記、詩歌、朗読からダンス、ヨガなど運動を伴うものまでさまざまな活動が行われる。これらのワークショップの利点は多岐にわたる。癒しの手段、ストレスの解消、さらには父親たちが自分の感情の情景をより強く意識する場として役立つ。創造的作業をパートナーと共同で行うことによっても、パートナー同士の心の親密さや繋がりを強め、より深いコミュニケーションによってお互いを支え合うための新たな道が開かれる。
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翻訳=高橋信夫

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