北米

2024.07.04 12:00

米国は「エネルギー自立」しているのか? 最近の大統領選討論から考える

米ジョージア州アトランタで開かれた大統領候補討論会に参加する現職のジョー・バイデン米大統領(右)と対立候補のドナルド・トランプ前大統領。2024年6月27日撮影(Justin Sullivan/Getty Images)

定義2 エネルギー余剰

筆者の見解では、「エネルギー余剰の定義」の方が有用だ。この定義では、エネルギー自立とは、国内で消費する以上のエネルギーを生産することを意味する。これに基づけば、たとえエネルギー資源を輸入していたとしても、米国は国内の必要量を上回る量のエネルギーを生産しているため、エネルギー面で自立していると見なされる。
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つまり、トランプ前大統領が「在任中にエネルギー自立を果たした」と言った時に使ったのは、エネルギー余剰の定義だ。この定義で考えると、米国は2019年、少なくとも1940年代以降初めてエネルギー余剰となった。この年、米国のエネルギー生産量は消費量を初めて上回ったのだ。

米国のエネルギー純輸入量は2005年に過去最高を記録したが、それ以降はシェールブームによる石油・天然ガス生産が急増したことで減少の一途をたどっている。米国は2019年にエネルギー純輸入国から純輸出国となり、当時のトランプ大統領を含む多くの人々がエネルギー自立を宣言した。

だが、バイデン政権下で自立を失ったわけではない。それどころか、米国の石油・天然ガス生産は伸び続けている。米国のエネルギー余剰は2022年に5940兆BTU(英国熱量単位)に達し、少なくとも過去70年間で最高となった(米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は先週、この数字を5830兆BTUに下方修正したが、それでもなおトランプ前政権下の余剰分を上回っている)。2023年のエネルギー余剰は7800兆BTUに膨らみ、過去最高を更新した。2019年のエネルギー余剰はわずか610兆BTUだった。よって、上述の主張2も正しいということになる。

結論

このように、米国のエネルギー自立を巡る議論は、異なる定義や政治的な美辞麗句によって誤解を生むことが多い。エネルギー資源の輸入をゼロにするという真のエネルギー自立は現実的ではなく、相互に結び付いた世界のエネルギー市場を反映するものでもない。
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国内の消費分より多くのエネルギーを生産するという、より現実的な定義を使えば現状を把握しやすくなる。この定義に基づけば、米国は2019年以降、トランプ、バイデン両政権下でエネルギー生産量が伸び、エネルギー自立を達成しただけでなく、余剰分も拡大している。

特に石油・天然ガスの生産技術の進歩によってエネルギー純生産量が伸び続けていることは、米国のエネルギー産業が堅調であることを裏付けている。米国が前進するためには、国にとって確実で力強いエネルギーの未来を支える政策を育成し続けることが極めて重要だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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