定義2 エネルギー余剰
筆者の見解では、「エネルギー余剰の定義」の方が有用だ。この定義では、エネルギー自立とは、国内で消費する以上のエネルギーを生産することを意味する。これに基づけば、たとえエネルギー資源を輸入していたとしても、米国は国内の必要量を上回る量のエネルギーを生産しているため、エネルギー面で自立していると見なされる。つまり、トランプ前大統領が「在任中にエネルギー自立を果たした」と言った時に使ったのは、エネルギー余剰の定義だ。この定義で考えると、米国は2019年、少なくとも1940年代以降初めてエネルギー余剰となった。この年、米国のエネルギー生産量は消費量を初めて上回ったのだ。
米国のエネルギー純輸入量は2005年に過去最高を記録したが、それ以降はシェールブームによる石油・天然ガス生産が急増したことで減少の一途をたどっている。米国は2019年にエネルギー純輸入国から純輸出国となり、当時のトランプ大統領を含む多くの人々がエネルギー自立を宣言した。
だが、バイデン政権下で自立を失ったわけではない。それどころか、米国の石油・天然ガス生産は伸び続けている。米国のエネルギー余剰は2022年に5940兆BTU(英国熱量単位)に達し、少なくとも過去70年間で最高となった(米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は先週、この数字を5830兆BTUに下方修正したが、それでもなおトランプ前政権下の余剰分を上回っている)。2023年のエネルギー余剰は7800兆BTUに膨らみ、過去最高を更新した。2019年のエネルギー余剰はわずか610兆BTUだった。よって、上述の主張2も正しいということになる。
結論
このように、米国のエネルギー自立を巡る議論は、異なる定義や政治的な美辞麗句によって誤解を生むことが多い。エネルギー資源の輸入をゼロにするという真のエネルギー自立は現実的ではなく、相互に結び付いた世界のエネルギー市場を反映するものでもない。国内の消費分より多くのエネルギーを生産するという、より現実的な定義を使えば現状を把握しやすくなる。この定義に基づけば、米国は2019年以降、トランプ、バイデン両政権下でエネルギー生産量が伸び、エネルギー自立を達成しただけでなく、余剰分も拡大している。
特に石油・天然ガスの生産技術の進歩によってエネルギー純生産量が伸び続けていることは、米国のエネルギー産業が堅調であることを裏付けている。米国が前進するためには、国にとって確実で力強いエネルギーの未来を支える政策を育成し続けることが極めて重要だ。
(forbes.com 原文)