北米

2024.03.27

米国、2023年に原油輸出量が過去最高を記録 過去10年で状況一変

米カリフォルニア州サンフランシスコ沖を航行する原油タンカー(Getty Images)

米エネルギー情報局(EIA)は、米国の2023年の原油輸出量が過去最高を記録したと発表した。同国では昨年、原油生産量が過去最高となり、液化天然ガス(LNG)輸出量でも世界一になっていた。

米国は原油の純輸入国である一方、過去100年以上にわたって少量の原油を輸出してきた。同国では原油の輸出は基本的に禁止されていたが、カナダ向けを中心に一部輸出が認められていたのだ。だが、この10年で状況は一変した。

シェールオイルブームによって米国の原油生産が急速に拡大するにつれ、国内生産者は軽質で硫黄分の少ないシェールオイルの販路を必要としていた。同国の石油精製業者には大きな原油需要があったが、重質で硫黄を多く含む原油の処理に多額の費用を投資していた。新たに生産される軽質の原油を処理することもできたが、割安な重質の原油を購入する方が経済的にははるかに理にかなっていたからだ。

こうした状況によって、原油輸出禁止措置の廃止を長年望んでいた国内の石油生産者は供給過剰に陥った。だが、2015年12月、当時のバラク・オバマ大統領が複数のエネルギー条項を含む1兆1500億ドル(約174兆円)の予算案に署名したことで、石油生産者の悲願はかなった。この法案には、エネルギー資源の効率的な生産や販売を促進するため、連邦政府は原油の輸出に制限を課してはならないという条項が含まれていたのだ。ただし例外として、大統領が国家非常事態を宣言した場合や、商務長官が原油輸出によって供給不足に陥っていると判断したり、国産原油価格が国際価格を上回る状況が続いていると報告したりした場合に限り、輸出許可を最長1年間課すことが認められている。

この法案が成立すると、米国の原油輸出は直ちに上昇した。2015年に日量50万バレル(BPD)に満たなかった原油輸出は、2017年に100万BPD、2018年に200万BPD、2020年に300万BPD、2023年には400万BPDに達した。

昨年の米国の原油輸出先1位はオランダ、次いで中国、韓国だった。2018年以降、米国産原油の主な輸出先は欧州、アジア、オセアニアとなっている。

2022年のウクライナ侵攻開始を受け、欧州連合(EU)がロシアからの海上輸送による原油輸入を禁止する制裁を科したことから、米国の欧州向け原油輸出が急増。こうした制裁を背景に、昨年も米国の欧州向け原油輸出は伸び続けた。注目すべきは、昨年の米国の欧州向け原油輸出の平均が180万BPDで、アジアとオセアニア向けの170万BPDをわずかに上回ったことだ。

原油輸出が増加し続けていることで、米国では原油の純輸入量が着実に減少している。2004~07年にかけて、同国の原油純輸入量は平均1000万BPDを超えていた。ところが昨年には240万BPDにまで低下し、1972年以来の低水準となったのだ。

原油輸出が最小限に抑えられていた時代から、国際市場で突出した供給国になるまでの道のりは、米国のエネルギー政策が進化していることを示している。強固な法整備と市場環境の変化により、同国は国際的な石油供給網に大きく貢献するようになった。地政学的緊張や経済的な課題を克服しながら原油の主要輸出国として台頭しつつある米国は、世界のエネルギー市場の将来を形作る態勢を整えている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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