『人間関係を半分降りる』はタイトル通り、あまりにも濃密すぎる人間関係から離脱して、緩やかに繋がっていくことがテーマだ。本書ではその実践的な方法が多岐にわたって紹介されている。その目的は、少しでも気楽に生きていくため、だ。
これは『完全自殺マニュアル』と共通した目的でもある。『完全自殺マニュアル』は決して自殺を推奨する書籍ではない。鶴見氏自身、後書きで以下のように明言している。
「『イザとなったら死んじゃえばいい』っていう選択肢を作って…ちょっとは生きやすくしよう、ってのが本当の狙いだ。別に『みんな自殺しろ!』なんてつまらないことを言ってるわけじゃない」
他方、『人間関係を半分降りる』の後書きにも以下のようなフレーズが含まれている。
「『こうしよう』と呼びかける人には、『みんなこうしろ』と全体を変えようとする人と、『こうしたい人はしていい』と個人の選択肢を増やそうとする人の二種類がいる。(中略)そして自分はこの本でも、そしてほぼいつも後者だ」
こうして並べてみると、二つの書籍は、アプローチ方法こそ違えど似通った性質を持っていることがわかる。どちらも、選択肢を増やしてどうにか生きていくことを志向して書かれているのだ。ストレス社会と呼ばれるようになって久しい現代日本を生き抜くために重要な考え方を、鶴見氏は一貫して主張し続けているのである。
『完全自殺マニュアル』から『人間関係を半分降りる』まで約30年、自身の心境の変化や、現代社会で大きく取り沙汰されるようになった「生きづらさ」についてどう捉えているのか。鶴見氏本人に話を聞いた。