ののしりはたいてい、怒りや敵意と結び付けられるが、ののしることは、ストレスの多い出来事にうまく対処する上で重要なはけ口になる場合があり、本人のウェルビーイングにおいてプラスに働く可能性があるのだという。
このレビュー論文によると、口汚くののしることが有益である理由には次のようなものがある。
・痛みが和らぐ:
ののしることで得られるメリットのうち、最も注目すべきものの一つは鎮痛作用だ。つまり、痛みに対する敏感さや知覚が低減されるのだ。2009年発表の有名な研究では、実験参加者に両手を氷水に沈めてもらったところ、ののしり言葉を口にしてもよいと言われたグループの方が、当たり障りのない表現を使うよう指示された集団よりも、冷たさに耐えられる時間がずっと長かった。
・感情の調節:
ののしり言葉を口にして不満や怒りを表現すると、張りつめた緊張感がほぐれやすくなる。激しい感情を声に出して吐き出すと、感情的カタルシス(発散による解放)が得られて、ストレスレベルが低下する可能性がある。興味深い話としては、複数言語を話す人が感情を呼び起こしたり処理したりするときには、母語でののしるのを好むことが、2022年発表の研究で明らかになっている。
・自信が増す:
ののしることで、体力を必要とする作業のパフォーマンスが向上し、本人の前向きな感情が強化され自信が増すことが、2022年の研究で示されている。
・拒絶された感情への対応:
2017年発表の研究によると、ののしることには、社会的な絆が脅かされたときに覚える「社会的な苦痛」を和らげる効果もあるという。社会的な絆が断ち切られそうな場面では、拒絶された苦しみに対応する上で、ののしることが役立つ可能性があるのだ。さらに、口汚いののしり言葉は、それを耳にする他人は不快かもしれないが、一方で人と人との結びつきを強め、仲間意識を育み、雰囲気を和らげる場合がある。状況次第では、誠実さや信頼を加味する場合もある。
どのくらいなら、ののしってもいいのか
このレビュー論文で取り上げられたさまざまな研究では、痛みを感じたときに声に出してののしった参加者のほうが、ののしらなかった参加者よりも苦痛が軽減したことも明らかにされている。自分にとって自然だと思えるののしり言葉を選んで口にしたところ、強い感情的反応が引き起こされた参加者もいた。大半の研究では、身体的な苦痛にさらされた参加者が、一定のペースと声の大きさでののしるよう指示を与えられ、それによって、痛みへの耐性が改善されていた。ということで、痛みを感じたときは、毎秒ごととか、3秒ごとにののしるといいかもしれない。叫ぶ必要はないが、気持ちを表現できる程度の大きな声を出すといい。