経済・社会

2024.07.05 13:00

真の「クールジャパン」

それゆえ、日本型経営においても、昔から、「企業は本業を通じて社会に貢献する」という思想が語られ、経営者には、「千人の頭となる人物は、千人に頭を垂れることができなければならぬ」という警句が語られ、営業の現場では、「お客様は、心の鏡」という心得が語られるなど、欧米の企業観、リーダー観、顧客観とは全く違う深みある思想が語られてきた。
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特に、日本の「おもてなし」の思想は、人と人との出会いを一度限りのかけがえの無いものと受け止める「一期一会」の心得や、別れのときも、相手に心を残す「残心」の心得など、欧米の「サービス精神」や「ホスピタリティ」の思想とは全く違った、深い精神性を伴ったものである。

さらには、世界全体が深刻な地球環境危機に直面し、大量生産・消費・廃棄の文化を厳しく見直す時代において、「MOTTAINAI」という言葉が国際語になったように、日本という国は、昔から、小さな国土の中で、限られた資源を節約し、大切に使い、再利用し、環境と調和した文化と技術を育んできた国である。また、「和食は健康食」と言われる背景には、「医食同源」といった我が国独特の食文化がある。

このように、いま、「クールジャパン」という名のもとに、「日本文化の深み」に世界の人々が注目し、関心を持ってくれているのは、それが、世界平和や資本主義、企業経営や顧客観、環境共生や食習慣など、様々なテーマにおいて「世界の未来」のあるべき姿を先取りしているからに他ならない。
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しかし、残念なことに、我々日本人は、自国の文化の深みと先進性に気がつかず、それを学ぼうとしない。その姿に気づいたとき、真の「クールジャパン」の潮流が生まれ、世界を変えていくだろう。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。全国8500名の経営者やリーダーが集う田坂塾塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など100冊余。

文=田坂広志

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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