単にVCの数を増やせばいいわけではない
レッシ氏はXで「世界をよりよくする力へとVCを変革する社会的エンジニア」と自己紹介しています。実際、デサイル・グループは、プロフェッショナリズムを持つ成功するVC創出を目指すと同時に、社会にポジティブな結果を追求するVCのエシカル・コード(倫理規範)を定め、これへの賛同がアクセラレーターへの参加条件となっています。「単にVCの数を増やせばいいわけではありません。VCのお金は正しいこと・よきことの力になるべきですが、そうではない例もあります。倫理感のある、質の高いVCを増やしていきたい」(レッシ氏)
また、スタートアップのエコシステムづくりは、VCへのサポートだけで終わりません。LPとVCとのつながりが大切であり、そのためデサイル・グループはLP向けに8週間のプログラム「LPインスティテュート」を始めました。投資候補となるVCを選び、デューディリジェンスを経て、1件以上の投資を実行することを目指すプログラムです。VCラボの卒業生VCとつなげ、相互に利益を上げる目論見です。
ちなみに、デサイル・キャピタルはVCラボの卒業生VCに投資しています。「新しいVCは1号ファンドが最もリターンがよいということが証明されつつある」と、ヴィダル氏は言います。つまり、新興だからと様子見をするより、新興VCの中でよいものに投資するのは理にかなっているということです。
では、投資家はVCとのよいつながりのために何に気をつければよいでしょう。例えば、創設したばかりの小さなVCに対して、例えば監査など大企業的に過剰な要求をしても意味は無く、人気のあるVCからは避けられます。VCをよりよく理解すれば、互いに効率的に成果に向かうことができます。LPインスティテュートでは、バリー・エッガース氏(エンタープライズIT分野で名高いVCのLightspeed Venture Partners共同創業者)など経験豊富なゲスト講師から学ぶことができます。
「新世代によるVCルネッサンス(復活)を実現したい」と考えるレッシ氏。VC、そして投資家をサポートし、世界によりよいスタートアップ・エコシステムができるよう取り組んでいますが、グループの強化や国際対応などの面で、まだまだやることはありそうです。日本側としてできることを、筆者も提案してみたいと思います。