ジ・エンジンは米国時間6月18日、同社にとって過去最大の3億9800万ドル(約628億円)の3号ファンドを組成したと発表した。同社は2020年に2億5000万ドル(約394億円)の2号ファンドを組成しており、今回の調達で運用資産は10億ドル(約1580億円)を突破した。ジ・エンジンはこれまでに50社以上のスタートアップに投資しており、投資先企業の合計調達額は50億ドルを超えている。
2016年にMITからスピンアウトした同社は、気候テックや先進コンピューティング、バイオテクノロジーなどの分野のアーリーステージのスタートアップを支援している。ジ・エンジンは、2023年にアクセラレーターと部門とベンチャーキャピタル部門に会社を分割したが、レイは、アクセラレーター部門の役員を兼任しつつジ・エンジンのCEOを務めている。
ここ数年、スタートアップ投資の減速が報じられる中でも、同社が対象とする分野の調達額は、2016年から2023年にかけて年平均21%の成長を遂げたという。その背景には、米国政府の半導体産業支援策のCHIPS法やインフレ抑制法(IRA)によって政府の資金が投入され、民間部門にもインセンティブが与えられたことが挙げられるとレイは述べている。
「当社の資本基盤は、7年前よりもはるかに強固です」と彼女は述べている。
ジ・エンジンは、気候テック分野で幅広いポートフォリオを持っている。同社のこの分野の投資先には、核融合発電を手がけるCommonwealth Fusion(コモンウェルス・フュージョン)や、「鉄空気電池」を開発するForm Energy(フォーム・エナジー)、超伝導テクノロジーを用いた高効率の送電技術を開発するVEIR(ヴィア)などが挙げられる。
光を基盤とした半導体
また、現在のAIブームを支える半導体分野に関しても、レイは、環境コストと財務コストの両方を抑えた新たなプロダクト送り出すチャンスがあると考えている。ジ・エンジンの投資先のCelestial AI(セレスティアルAI)は、電気よりもエネルギー効率が高い光をベースとしたチップを構築している。同社はまた、量子コンピューティングの企業にも投資している。「電力や気候、コンピューティングは、すべて密接に関係しています」とレイは述べている。ジ・エンジンの投資先の分野は多岐にわたるが、「それらはすべて相互に関連しています」と彼女は説明する。例えば、同社のヘルスケア分野の投資先のVaxess(ヴァクセス)は冷蔵保存の必要のないワクチンパッチを開発し、アクセシビリティと持続可能性の両方を改善しようとしている。
レイは、ジ・エンジンの最初の2つのファンドから得た教訓を活かし、3号ファンドでは、ハードテックの問題にさらに大胆に取り組むつもりだと述べている。「私たちは、今後も前進を続けます。なぜなら、この分野には、資本的な側面だけでなく環境に与えるインパクトの面でも巨大なリターンが見込めるからです」と彼女は語った。
(forbes.com 原文)