オークションハウスのフィリップスが5月14日にニューヨークで開催した現代アート作品のオークションでは、1982年に制作された幅約2.4メートルのキャンバスに描かれた『Untitled (ELMAR)』が、過去最高額となる4650万ドル(約73億円)で落札された。
また、クリスティーズが同月に行った競売では、同じ1982年の作品『The Italian Version of Popeye has no Pork in his Diet』に、3000万ドル(約47億円)の値が付けられた。
バスキアの作品は美術館やギャラリーにとどまらず、Tシャツやトートバッグ、そして自宅にあるテレビの画面でも、見られるようになっている。サムスンは4月、超薄型テレビ「Frame」で提供しているアート作品のサブスクリプション・サービス「Art Store」に、新たにバスキアの12作品を追加したと発表した。
このデジタルサービスの利用料金は、年額49.90ドル(約7800円)。月額制なら毎月4.99ドル(約780円)となる(サムソン製以外のテレビでも、利用が可能)。2500点を超える作品が取りそろえられており、バスキアの作品はこのサービスで初めて、デジタル形式で公開されることとなった。
自宅に飾ることもできるようになったバスキアの作品には、カラーブロックが特徴的な後期の作品『King Zulu(キング・ズールー)』(1986)やアンディ・ウォーホルとの共同作品『Dos Cabezas(ドス・カベサス)』(1982)、バスキアが憧れていたジャズ・ミュージシャン、チャーリー・パーカーへのオマージュとして制作した『Bird on Money(お金の鳥)』(1982)などがある。
「商業化」の影響は?
バスキアの作品の中には、「その脳内をのぞき見ることができる窓のようだ」と評されるものがある。人種差別や黒人の歴史、アメリカ文化、資本主義、そしてアメリカのポップ・カルチャーのオーナーシップと商業化に対するバスキア自身の思いなどが、表現されているとみられている。バスキアが薬物の過剰摂取で死去したことを考えれば、無秩序に思える、未完成のようにも見える作品が、薬物の影響を受けていないとみるのは難しいが──。