起業家

2024.06.15 09:00

成功した起業家やプロが「あえて」AIを使わない理由

道義上の懸念

このような創業者たちはAIで生成されたコンテンツの「質」にも疑問を感じているが、同じくらい「道義的側面」も気にかけている。プロの著述家兼編集者のレベッカ・ベニソンは、「人は私の仕事と経験に対してお金を払うのであって、学習モデルのそれに対価を支払っているのではない」と信じており、個人的にも仕事のためにもAIを利用することはない。「時々、AIが生成したコンテンツの編集を頼まれることがありますが、それには人間による洞察と事実確認が絶対に必要です」と彼女は説明する。

もう1人のプロの著述家でDigitalMEの創設者であるロス・ジェンキンスは、「顧客から特別に依頼された場合」のみAIを使う。彼にとって、それは「誠実さ」に関わることだ。「顧客には、その仕事が人間によってなされたものであると知ってほしい」その人が以前にもいっしょに仕事をしたことがある人間だから、「仕事の質に信頼を持てるのです」

著作権の問題

「AIは他人のコンテンツを利用し、それを送り返しているのです」とデジタル広告会社Marketing Optimist(マーケティング・オプティミスト)の創業者、リチャード・ミッチーは語る。「AIを使わないことが私たちの競争優位性です」とミッチーはいう。特に最近では「創造性や品質に言及することなく、より早く、より安く仕上げるためにAIを使っている人が、広告業界にはたくさん存在している」からだ。ミッチーのような一部のマーケティングのプロにとって、オリジナリティが重要なのだ。

プロの著述家でKW Communications(KWコミュニケーションズ)のクリステン・ウィルツェも、AIに「深刻な盗用懸念」を持っており、自分のビジネスにAI文章作成ツールは使わない。なぜなら、AIの生成する「言葉があまりにも陳腐で人畜無害すぎる」からだ。

Bluebell Marketing(ブルーベルマーケティング)の創設者で元グーグルの社員だったバーニー・デュラントは、数十億の単語でトレーニングされた大規模言語モデルが非常に退屈なアイデアを生成することがあると知っている。

デュラントが提案するのは、AIを利用することに変わりはないが、「ChatGPTに広告キャンペーンの戦略を作成させ、それを最も平均的で当たり障りのないオプションであると仮定し、その真逆を選択すること」これが、本当に顧客にリーチする方法である。

AIはすべての人に有用であるわけではない、創業者たちはノーという

逆に感じるかもしれないが、すべての人がAIの流行に乗っているわけではない。すべての起業家が、ChatGPTをトレーニングして自分と同じような文章を書かせようとしたり、AIツールを活用してより短時間でよりインパクトを与えようとしたり、自分たちの専門的知識をAIで収益化しようとしているわけではない。敢えてそうしない理由に、クオリティ不足、道義的な懸念、プライバシーの問題などを彼らは挙げている。

より安く、より早く結果を求める需要は、人間だからこそできる仕事に対する需要を上回るだろうか? 上に紹介した創業者たちは、進化し続けるAIツールの軍勢の先を行き続けるために、自分自身を(そして人間性を)支持している。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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