サイエンス

2024.06.16 11:00

米国を恐怖に陥れる「ジョロウグモ」、実は害虫駆除に効果的?

Getty Images

現在地球上には5万種類以上のクモ類がいるが、最近米国東海岸の大部分を恐怖に陥れているのはジョロウグモだ。

日本、中国、韓国を中心に東アジアを原産とするジョロウグモ(学名:Trichonephila clavata)は、その大きさ、極悪とも言える外見、そして密航者のような移動手段を取ることで特に際立つ存在だ。彼らは厳密には「飛ぶ」ことはないが、人間の輸送システム、おそらく貨物船を使って彼らが世界各地へ「飛ぶように」広がっていると専門家たちは考えている。今年の夏、このクモたちが東海岸にも現れる可能性があることを米国のクモ恐怖症者たちが恐れているのはそれが理由だ。

しかしパニックになってはいけない。ジョロウグモに関するメディアの狂乱に惑わされる前に、考えておくべき3つの本質的事実を以下に説明する。

人体やペットに害を与える可能性は低い

あなたが痒みに非常に弱い体質だということでなければ、ジョロウグモの毒が人体に深刻な損傷を与えることは考えにくい。飼っているペットについても同様だ。起こりうる最悪の結果がアレルギー反応であり、最善のケースでは、あなた(あるいはあなたのペット)は一切このクモと対面することはないだろう。なぜならジョロウグモは極度の恥ずかしがり屋だからだ。

カラフルな警戒色とは裏腹に、ジョロウグモの毒は、典型的な昆虫より大きな生物に対してあまり効果的ではない。

地域生態系にプラスの影響も?

昨年、研究者らはジョージア州とサウスカロライナ州でジョロウグモのメス213匹をクモの巣から採集して彼らの食べた餌を分析した。このクモは、同じ種のオスとメスが、生殖器官以外にも異なる外見的特性を持つことを表す「性的二形」という特徴をもつ。

メスは、脚が最大10センチメートルにも達するほど大きいだけでなく、色彩も鮮やかだ。体は鮮やかな黄色と黒の縞模様で腹部には赤い斑点があり、容易にオスと見分けられる。一方オスは、はるかに小さくカラフルでもなく、地味な黒褐色のためメスよりも目立たない。

研究チームは、クモの内臓およびクモの巣に残った獲物の残骸の両方を調べた。クモが何を食べるかを特定することで、研究者らは地域生態系におけるクモたちの役割を推測することができた。これによって、もしジョロウグモがニューヨーク周辺の3州に到達した時何が起きるかに関する貴重な手掛かりが得られた。
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