中国は専門知識を蓄え、国外への原子炉供給にも乗り出した。国営の中国核工業集団(CNNC)と中国広核集団(CGN)は、第3世代原子炉「華竜1号」を開発。この新たな原子炉は、2021年に福清原子力発電所で稼働を開始した。同国は昨年、パキスタンでチャシュマ原子力発電所5号機となる華竜1号の建設に着手した。中国は国外で社会基盤を建設することにより、影響力を拡大しようとしている。
米国の原子力産業は、かつては世界の羨望(せんぼう)の的だった。1990年には112基の原子炉が稼働し、現在の予測よりはるかに速いペースで炭素排出量実質ゼロに向かっていた。それから34年経った今、同国は稼働していた原子炉の3分の1近くを閉鎖。他方で新規原子炉はほとんど建設されておらず、残った原子炉の平均年齢は数十年と老朽化が進んでいる。このままでは、向こう10~15年のうちに数十基の原子炉が耐用年数を迎えて廃炉せざるを得なくなる。そうなれば、米国は自国の発電量の20%近くを失うという事態に直面するだろう。
こうした中、米国にもようやく変化が訪れようとしている。原子力に対する国民の態度は支持政党に関係なく、好意的な方向に変化している。米政府は現在、ブルガリア、ガーナ、インドネシア、カザフスタン、フィリピンをはじめとする外国との契約獲得に向け、米輸出入銀行(EXIM)や米国際開発金融公社(DFC)、小型モジュール炉(SMR)メーカーらと協力している。議会では、原子力規制委員会(NRC)の雇用を増やし、申請手数料を引き下げることで規制の障壁を下げる「原子力推進法」が下院で可決された。同法はまた、賞金を授与することで、原子炉の技術革新を促す。本稿執筆時点では、上院ではまだ審議されていない。
米国の原子力開発に対する障壁が取り除かれれば、ジェネラル・アトミクスやベクテルといった米企業も利益を得ることになる。国際原子力機関(IAEA)は、世界の原子力発電能力は2022年の371ギガワットから、2050年には890ギガワットに達すると予測している。
世界の大国が、原子力は気候変動への対処と自国の経済力強化に重要な役割を果たすと認識するにつれ、原子力は変曲点を迎えている。米国は国内の原子力産業を飛躍させるために、上院が原子力推進法を可決し、ジョー・バイデン大統領が承認すべきだ。今行動に移さなければ、米国の原子力企業が経済的な機会を逃すだけでなく、エネルギーを巡ってロシアや中国に依存する国が増える中、米国にとっては地政学的にも大きな敗北となるだろう。
(forbes.com 原文)