暮らし

2024.09.05 14:15

「konbini研究」のハーバード大文化人類学者が日本のコンビニを精査、雑誌コーナーはなぜある?

3.トイレ:「何か買ったほうがいいかな」という意識

トイレはコンビニの利便性提供における基本要素だ。比較的新しいコンビニならば男女別のトイレを設置している。商品の購入をしなくてもトイレを使ってよいのだが、トイレ利用時には店員に声をかけるよう求められるので、このひと手間が客に「何か買ったほうがいいかな」という意識をもたせるようだ。

就職面接に行く学生がコンビニのトイレでスーツに着替えたり、コンビニの駐車場で仮眠したトラック運転手が顔を洗ってリフレッシュするために使うこともある。災害が発生したときにもコンビニは店を閉めることなく、トイレを探す人々を受け入れる。

4.レジカウンター:子どものおつかいの「初ステージ」にも

コンビニのレジカウンターは、人と人とのあいだでさまざまな、言語的、非言語的なやりとりが交わされるメインステージだ。

商品やサービスの精算を行うとともに、POSレジで顧客データを集める。新人店員が苦戦したり、外国人労働者がつたない日本語を駆使していたりする様子も見受けられる。

レジカウンターは、子どもが商品とお金を交換する仕組みを学ぶ場所でもある。たとえば、4歳の女の子が「初めてのおつかい」で家族から持たされたお金を出したら、コンビニオーナーはその子がお釣りを落とさないように、小銭をビニール袋の中に入れてやったりする。

カウンターに立つ店員はさまざまな接客をしなければならない。ほとんどは手早く、記憶に残らないやりとりだが、特別な印象を残すこともあるようで、裏にメールアドレスや電話番号を書いたレシートを渡されることもある。

ストーカーじみた客がいれば、店員同士が団結して壁となり、標的にされた人を危険がなくなるまでバックヤードに避難させる。緊急事態が起きた場合には、カウンターの下にある赤いボタンを押せば警察に連絡が行く。

ホワイトロー博士自身が描いた「コンビニ店内俯瞰図」『トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド/Tokyo Totem – A Guide to Tokyo』(2015年、フリックスタジオ刊)より)https://www.amazon.co.jp/dp/4904894286/

ホワイトロー博士自身が描いた「コンビニ店内俯瞰図」『トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド/Tokyo Totem – A Guide to Tokyo』(2015年、フリックスタジオ刊)より)

5.バックヤード:重要で表情豊かなスペース

「バックヤード」という呼称は誤用されているが、本来の「裏庭」という意味ではない。たいてい雑然とした暗いスペースで、店員たちの待機場所だ。休んだり、食事をしたり、メールをチェックしたり、仮眠したりする。オーナーと店員が打ち合わせをしたり、アルバイト希望者の面接をしたりもする。

6.ウォークイン冷蔵庫:観察場所にも

ウォークイン冷蔵庫もバックヤードの一部だ。店員がちょっと頭や身体を冷やすために入ることもある。店員の私物の飲食物を保管しておく場合もある。客に気づかれずに内側から観察するのにも適している。






ギャヴィン・H・ホワイトロー博士(Gavin H. Whitelaw, Ph.D.) ◎ハーバード大学ライシャワー日本研究所 エクゼクティブ・ディレクター。前・国際基督教大学教養学部 上級准教授。専門は文化人類学・民俗学・地域研究・日本研究。

『トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド/Tokyo Totem – A Guide to Tokyo https://www.amazon.co.jp/dp/4904894286/ 』(2015年、フリックスタジオ刊)

『トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド/Tokyo Totem – A Guide to Tokyo』(2015年、フリックスタジオ刊)

翻訳=上原裕美子 編集=石井節子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事