エンブラエル・エックスは、エンブラエルのグループ内で革新的な技術を創出するインキュベーターとして2017年に設立された。米国を拠点とする同社は、不確実性やリスクが高く、従来は非中核事業として優先順位が低かったアイデアに焦点を当てている。
「いつまでも過去の栄光に安住しているわけにいかないし、革新的な技術から取り残されたくもなかった。むしろ、我々がイノベーションをリードしたかった」と、エンブラエル・エックス社長のダニエル・モチドロワーは、先月開催されたテックカンファレンス『ウェブ・サミット・リオ』で語った。
モチドロワーによると、エンブラエル・エックスが過去5年間で事業化したイノベーションは、親会社であるエンブラエルの収益の約40%を占めるという。彼は、この水準を維持し、将来的には50%まで高めることを目指している。
しかし、収益貢献度を現状の水準で維持するためには新製品を継続的に投入する必要があり、容易でないことをモチドロワーは理解している。「我々は航空業界におけるイノベーションのリーダーとしての地位を維持することに全力を注いでいる」と彼は言い、脱炭素化の取り組みが重要な役割を果たすと指摘した。
カーボンニュートラルな航空
2022年に、国際民間航空機関(ICAO)は国際航空分野で2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標を設定した。この野心的な目標を達成するためには、クリーンな航空機と燃料に最大5兆ドル(約785兆円)を投資する必要があるとされている。CO2排出量の削減は、エンブラエル・エックスが主導するプロジェクトの主要分野の1つだ。エンブラエルは、2040年までに航空機からの排出量とエネルギー消費量をカーボンニュートラルにするという目標を掲げている。「カーボンニュートラルな航空を実現するという公約をどのように遵守するかが問題だ。短時間のフライトであればバッテリーが解決するかもしれないが、より長いフライトはどうするのか考えなければならない」とモチドロワーは話す。
「サイズが少し大きく中距離を飛ぶ飛行機の場合、水素燃料電池を使って機内で電気を生成することを検討するかもしれない。より長い距離を飛行し、多くの貨物や乗客を運ぶ飛行機では、クリーンな燃料である水素をタービンで燃焼させる方法もあり得る」と彼は述べた。