アジア

2024.05.29 18:00

「金持ち自慢」の中国のインフルエンサー、同国のSNSから締め出される

Tada Images / Shutterstock.com

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中国で最も人気のあるインフルエンサーの1人の「王紅権星」は、SNS上で自身の金持ちぶりを見せびらかすことができなくなった。中国政府のネット検閲当局であるサイバースペース管理局が、王のような知名度の高いインフルエンサーを含むSNSユーザーが 「これ見よがしのペルソナ」を作ることを禁止するとの通達を出し、「中国のキム・カーダシアン」と呼ばれた王の国内での影響力は急低下した。

王は以前、高級不動産を7軒所有していることを自慢し、身につける衣服や宝石の合計金額が140万ドル(約2億2000万円)以下で外出したことがないと豪語していた。

ネット取り締まりの最新例

王はTikTokの中国版であるDouyin(抖音)でフォロワー430万人を抱えていた。「自粛違反」のためにDouyin上の王のプロフィールにはアクセスできず、王にも連絡が取れない状態だ。

「ひとたび物質主義が広がり始めると、10代の若者に悪影響を与えかねない。よって、ネット上で贅沢を見せびらかす風潮は止める必要がある」と中国国営メディアの北京ニュースは報じたと英紙 フィナンシャル・タイムズの報道にはある。

裕福であることを誇示していた他の有名なインフルエンサー10数人も中国のSNSから締め出されている。SNSに投稿する人を対象とした取り締まりは今回が初めてではない。中国政府は定期的に「明快」な取り組みを展開し、サイバー空間でのいじめや最近では「階級対立」など、ネットの弊害と見なすものを一掃してきた。

検閲当局の判断は、中国の景気が大幅に悪化し、金持ちが自身の豊かさを誇示することにますます神経を尖らせている中でのものだ。

「国家主席の習近平はここしばらくの間、派手な富の誇示は中国共産党の倫理に反すると示唆してきた。新年のあいさつでは『共同富裕』に焦点を合わせるよう呼びかけており、取り締まりはそうした意向に沿ったものだ」と、米ニューヘブン大学ヘンリー・C・リー刑事司法・法医学科学部で国家安全保障を専門とするマシュー・シュミット准教授は説明した。

「習はソビエト連邦の歴史と、官僚たちの腐敗に対する不満がソ連崩壊で果たした役割を強く意識している」とシュミットはいう。「中国の指導者たちは何十年もの間、そうした失敗を意図的に避けようとしてきた。中国の共産主義がソ連と大きく異なるのはそのためだ」

他国への影響は

中東やアフリカなど、階級間の対立で反発が強まっている他の国々でも、中国同様の富の誇示を禁止する措置が取られる可能性はある。米国では多くのインフルエンサーが有名人になっており、有名であることで知られていることが多い。そうしたインフルエンサーがSNSから排除されることはないかもしれないが、少なくとも若者をターゲットとした市場でブランドを成長させたいと願うのであれば、富の誇示を控える必要があるかもしれない。

「Z世代は、自分を絶え間なく宣伝する裕福なインフルエンサーを賞賛すると同時に軽蔑もしている」と話すのは米市場調査会社Near Media(ニア・メディア)の共同創業者でソーシャルメディアアナリストのグレッグ・スターリングだ。「Z世代の多くはそうしたインフルエンサーの仲間入りをしたがっている。インフルエンサーになることは、過去にはZ世代が最も熱望していたことの1つだった。だが同時に、Z世代はインフルエンサーの多くが公にしている生活が極めてうわべだけのものであることを認識している」ともスターリングは指摘した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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