標高3055mのハレアカラ山の山域は、マウイ島の半分以上を占める。5月初旬に開かれた住民説明会では、地域団体が米軍の計画に強く反対し、建設阻止のため行動を起こすと宣言する声も上がった。
ハワイでは2019年に同様の事態が起きている。ハワイ島のマウナケア山頂に望遠鏡を新設する計画が承認された際、建設に反対する先住民らの団体が山頂に続く道路を封鎖したのだ。抗議活動を受けて、新たに監督機関が設けられたが、現在に至るまで新しい望遠鏡は建設されないまま資金源を失う瀬戸際に追い込まれている。
マウイ島でも同じように対立が膠着状態に陥るおそれがある。そうなれば、ハレアカラ国立公園の山頂エリアへの立ち入りが制限されることになるかもしれない。
複数の望遠鏡で彗星やスペースデブリなどの地球近傍天体を観測するハレアカラ天文台群があるのは、厳密にはハレアカラ国立公園内ではない。しかし、国立公園の頂上エリアに隣接し、そこまで通じている道路は1本しかないため、もし天文台への行き来を遮断する目的でバリケードが築かれれば、展望台やハイキングコース、ビジターセンターのある人気観光地である頂上付近へのアクセスも途絶することになる。
新たな望遠鏡建設に反対する地域団体は、ハレアカラ山頂はハワイ文化における聖地であり、自然の状態を破壊することは冒涜につながると主張している。ハワイの既存天文台における望遠鏡のずさんな管理状態も、環境への懸念につながっている。
科学者たちは、新しい望遠鏡は宇宙観測の精度向上につながるとして米軍の計画に期待している。天文学は、夜空を観測して星を道しるべに太平洋を探検した航海の達人であるポリネシア人の伝統を引き継ぐ研究だとする見解もある。ハワイは太平洋の中央に位置し、標高の高い山があるため、安定した夜間観測に適している。
AMOS STARと呼ばれるこの計画は、6月7日までパブリックコメントを受け付けている。今後の計画推進にかかる米空軍の方針をめぐっては、その後でより詳細な情報が明らかになるだろう。
(forbes.com 原文)