節約して貯めたわずかなお金も、購買力の低下によって食いつぶされてしまう。加えて、人工知能(AI)の急速な台頭と普及は、やがて自分の労働力がテクノロジーに取って代わられるかもしれないという憂鬱な不安を呼び起こす。
所得格差の傾向
インフレは「隠れた税金」であり、家庭の購買力に直に影響する。だが、その負担はさまざまな所得や富の階層に不均等に分布している。この傾向が続けば、貧富の差が大幅に拡大しかねない。経済協力開発機構(OECD)によれば、これは社会不安、政情不安、経済全体の生産性低下につながる恐れがある。しかし、最低賃金の引き上げ、中間層を対象とした減税、教育や職業訓練への投資といった政策を政府が導入すれば、格差縮小の一助となるだろう。
テクノロジーが仕事に及ぼす影響は、諸刃の剣だ。自動化は一部の労働者の職を奪うかもしれないが、新しい機会を生み出す可能性もある。再教育プログラムを立案し投資することで、誰もが技術の進歩から恩恵を受けられるようにできるはずだ。
家庭が経済的な負のスパイラルに陥る理由
米国の家庭は、インフレ、商品・サービスの価格高騰、高額な医療費、政府債務の増大と社会事業への支出削減などの要因により、経済的苦境に立たされている。収入が低ければ、貯蓄で資産を築くのは難しい。住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、高金利のクレジットカードから生じる借金のため、毎月高額な返済に追われる羽目になる。失業すると、なけなしの貯蓄をすぐに食いつぶしてしまうため、状況はさらに悪化する。
経済基盤を構築できない限り、多くの人々は投資も蓄財もやりようがないのだ。緊急時資金を使い果たしてしまうと、蓄えを再建するのが難しくなる。大掛かりな治療を必要とする予期せぬ入院・通院などが発生すれば、家計は破綻し、自己破産を申請せざるを得なくなることもある。
(forbes.com 原文)