経営・戦略

2024.06.03 14:30

chocoZAPで証明。実験経営の凄み

「つらかったのは賞味期限切れ商品の廃棄。4tトラックで50台分、計200tを見送ったときはじくじたる思いでした」

その後、美顔器や「RIZAP」のヒットで復活・成長するが、買収した事業が不振で赤字に転落するなど、浮き沈みを繰り返す。上下動の激しさはまさしくジェットコースターだ。

何度つまずいても立ち上がるレジリエンスの強さが瀬戸の真骨頂だが、その強さを支えているのはメンタルのタフさやポジティブ思考だけではない。瀬戸は「失敗はデータベースの蓄積になる」と語る。

「判断のもとになるのはデータ。同じデータでも、本で読んだだけの知識と自ら行動して得た経験では重みが違う。痛みを伴う失敗が多い事業家ほど、いい学習ができます」

chocoZAP事業急成長の背景には、まさにこの思考法がある。当初、chocoZAPはブランドを隠し、価格やサービス内容を変えて約40店舗を展開した。比較実験のためだ。

「わざと同じ地域に出して、カニバリをどの程度起こすのかを調べたりもしました。うまくいかなければ撤退できるように賃貸契約も工夫。幸い撤退した店舗はまだありませんが、失敗もひとつの学習材料になるという考えで積極的に実験したからこそ、現在の形ができてきた」

chocoZAPは会員数112万人。国内フィットネスジム会員数1位に成長したが、実験は終わらない。今年3月、カラオケやランドリーなど7種類の新サービスを発表。なかには、今後入れ替わるサービスがあるかもしれないが、それも織り込んでトライを続ける。

「会員基盤は整いつつあります。マネタイズポイントはBtoB。すでに広告プラットフォーム事業を始めていますが、今後chocoZAPで培った自動化・省人化の知見をtoBで提供する展開もありうる。自信はあります」

現状に満足せず、常にストレッチで目標を掲げる瀬戸。この先も山あり谷ありが続きそうだ。


瀬戸 健◎1978年、福岡県生まれ。2003年に健康コーポレーション(現・RIZAPグループ)を設立。12年にRIZAPを立ち上げブームに。M&Aで拡大したグループを整理、22年にchocoZAPをスタートし、事業の柱に再成長を目指す。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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