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2024.05.16 13:00

AIで地中の熱源位置を予測、「地熱発電ベンチャー」のZanskarが50億円調達

地熱発電が有望なのは、地下の熱を利用するため、理論的には無限に再生可能であることだ。地熱を利用するためには非常に深い坑井を掘り、高温で高圧の熱水を汲み上げる。熱水は上昇するにつれて蒸気に変わり、発電所に電力を供給する。

地熱発電のコストは風力発電の約5倍

坑井の掘削費が、地熱利用における最大のコストだが、ピッチブックのレポートによると、風力発電プロジェクトのコストは1メガワットあたり約180万ドル(約2億8000万円)であるのに対し、地熱発電プロジェクトのコストはその約5倍の1メガワットあたり約870万ドル(約13億円)もかかる。スタンフォード大学プリコート・エネルギー研究所のローランド・ホーン所長によると、大半のプロジェクトにおいて、掘削費がコストの約半分を占めるという。

ザンスカーのCTOのジョエル・エドワーズによると、同社のテクノロジーは、熱源の貯留層を掘り当てる確率を高めることを目的としているという。これを実現するために、同社は人工衛星や地質調査、地震のときに地中を伝わる地震波などのデータをもとに、様々な機械学習モデルを使って掘削に最適な場所を予測している。また、同社が独自に行う試掘で得られたデータをモデルにフィードバックすることで、AIのプロセスをより洗練させている。

ザンスカーの社名は、ヒマラヤ山脈のザンスカール地方に由来する。同社の共同創業者であるホイランド(38歳)とエドワーズ(37歳)は15年前、この地で地質学を学んでいたときに出会った。その後も連絡を取り合っていた2人は、地熱探査の課題である貯留層を掘り当てる確率を向上できると確信し、2018年に会社を設立した。同社は、それ以来モデルの改良を続け、発電所の理想的な場所を特定することに取り組んでいる。

地熱発電の領域に参入したスタートアップはザンスカーだけではない。2019年以降、世界の地熱スタートアップには15億ドル(約2347億円)以上の資金が投じられている。例えば、掘削を向上する技術を開発したFervo Energy(フェルボ・エナジー)は、今年2月に2億4400万ドル(約380億円)を調達した。

ザンスカーは、新たに調達した資金でチームの拡大を計画しており、順調にいけば約4年後に最初の施設を稼動させる計画だ。「この技術は、我々に圧倒的な優位性を与えてくれるだろう」とホイランドは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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