起業家

2024.05.16 15:30

夫婦で創業。二人三脚で挑む頭痛治療用アプリ

石坂洋旭さん・川田裕美さん

実際に夫婦で起業してみると、意外とメリットはたくさんあった。そのひとつが、毎日24時間一緒にいるために、事業にかんする情報共有やちょっとした相談がすぐにできることだ。特に起業当初は小さな意思決定の積み重ねになるため、素早く事業を進められる。また、第2子の誕生は結果的に1回目の資金調達の直後になり、株主に事情を話して川田は産後2カ月間の休みをもらったが、当時は自宅がオフィス代わりだったこともあって、いつでもふたりで相談ができたほか、石坂を通して社内のミーティングの様子を把握することもできた。
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現在は、透明性を確保するために、従業員も知っておいたほうがいいことはできるだけオンラインのチャットツール上で議論するようにしているが、「事業のステージとしても、まだまだふたりで決めるべきことが多いフェーズなので、それを寝る直前にも話して決めてしまえるというのは、とても早くていいですね」(川田)。

会社のルールを自分たちでつくれるメリットも大きい。時間や場所に縛りを設けない制度にしたことも、仕事と家庭の両立に一役買っている。夕方には子どもの保育園の迎えやご飯の支度などで一度仕事を抜け、子どもの寝かしつけが終わってからまた仕事に戻るというのが、日々のルーティンだ。自宅はオフィスの近くに構えた。

その中間に保育園があるため、通勤の途中で子どもの送り迎えができるようになっている。研究開発型の事業であるため、現段階では客先対応にも追われず、スケジュール面でも多少の自由が利く。仕事上の大きなイベントを発生させるタイミングも調整できている。
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川田・石坂夫妻の仕事と家庭の両立は、その線引きを明確にしていないことが前提となっている。「考えてみれば、夫婦で一緒に仕事をすること自体は、古くから家業などである働き方。私の祖父母の家が牛乳屋でしたが、牛乳を搾りながら子育てしているのと大して変わらないと思っています」(石坂)。これにリモートワークがうまく組み合わさることで、従業員がどんどん増えるスタートアップでも経営が可能となっている。

ヘッジホッグ・メドテックはこれから頭痛治療用アプリの商用化に向けて大きく動き出す。ふたりはその先にある新たなプロダクトや事業展開も見据え、貪欲に成長する未来を描いている。


いしざか・ひろあき◎2014年モルガン・スタンレー入社。資金調達・M&Aなどに従事。19年、FOLIO入社。経営企画部長として、資金調達・新規事業などに従事。2021年、ヘッジホッグ・メドテックを共同創業し、CFOに就任。

かわた・ゆみ◎医師、医学博士、産業医。2014年に厚生労働省入省。17年にメドレーに参画。20年からソフトバンクで投資検討や海外企業とのJV設立を担当。21年、ヘッジホッグ・メドテックを共同創業し、CEOに就任。

文=三ツ井香奈 写真=小田駿一

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