AI

2024.05.14 13:30

異分野の先鋭たちに問う。AI時代の「働く」と生き残る人材の条件

イラストレーション=マルコス・モンティエル

「働き方改革」が日本で叫ばれ始めてから、変わらずにフォーカスされ続けてきたキーワード、それが「個」だ。「個を生かす働き方」「個を尊重する職場」「個が幸せを追求できる仕事」.....。時を同じくして「人的資本」という考え方が世に広まり、人材がもつスキルや知識などの無形資産が企業に利益をもたらす大切な価値として注目され、「個」を中心とした組織運営が求められるようになった。

一方で、生成AIやロボットなど、近年のテクノロジーの進化によって、人間を中心とした議論の前提そのものが揺らいでいる。そこで今回、人間が非人間的な存在と共存する「ポスト・ヒューマニズム時代」という視点にたち、キャリアの専門から遠い分野で活躍する6人の識者への取材を通じて、未来の働く意味や、人間に求められる役割を考察した。


人類史における革命「魂レボリューション」とは

バーチャル美少女ねむ

「バーチャル美少女ねむ」は、「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに2017年から活動している自称・世界最古の個人VTuberだ。ねむの「なかの人」は、昼間は一般の会社員として働き、仕事以外の時間はメタバース空間で活動している。メタバース文化のエバンジェリストとして、国連主催の会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム 京都2023」では英語でスピーチを行った。

メタバースが我々にもたらした3つの解放。それは「移動」「場所」「アイデンティティ」、そして「クリエイティビティ」の限界からの解放だ。特に彼女が「人類史における革命」だと指摘する「アイデンティティからの解放」を紐解いてみたい。メタバースで他人を認識する要素は、名前・見た目・声の3つだ。ねむはそれらを現実とは異なるものに変えることで、アイデンティティをコスプレしている。ねむをはじめ、メタバースの世界では、現実世界の男性が女性アバターを使用していることが多い。それは交流がしやすかったり、話しかけてもらえやすかったりと、コミュニケーション上の利点が少なくないからだという。

「今後、数値化できるものはすべてAIがやってくれる世の中になるでしょう。そのときに人間に残された仕事は、信頼やコミュニケーション、そして人と人とのつながりをつくること」とねむは話す。メタバースのなかでは、地球の裏側にいようが、誰とでも瞬時にその距離を縮めることができる。「だからここは心と心のやり取りに適した空間なんです。取り繕うことはもはや意味をなさず、自身がありたい姿のままで、自己肯定感が満たされ、互いに褒めあえる」。

すなわちメタバースをねむは「魂のコミュニケーションが可能になる新しい職場」だと言う。そこで生きていくうえでのヒントを教えてくれた。「自身の本質と向き合い、それを磨き続けることです」。
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文=谷本有香

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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