驚きの達成率、「高社会性」クラファン
READYFORは、社会性の高いプロジェクトをメインに手がけるCFサイト。近年、こうした医療系のCFが増加しており、2018年に5件だった病院によるプロジェクトは右肩上がりに増え、2023年には120件に。今年も、その数を更新するペースだ。特筆すべき点は、CF全体の平均目標金額達成率が30%ほどなのに対し、医療系は95%と、3倍以上の成功確率となっていることである。なぜいま医療系のCFが増えているのか。READYFORで医療分野の責任者を務める多田絵梨香は「病院の“広報活動”に対する考え方が、この5年〜10年でだいぶ変わってきたと感じます。受診者数が減ったという病院も増えてますし、そのなかで競合病院との差別化をアピールする必要性が出てきています」と話す。
実際、1日の病院の平均外来患者数は、2000年の181万人を境に下がり続け、2022年時点では125万人となっている(厚生労働省 病院報告)。
厚生労働省 「病院報告」
診療報酬はなかなか上がらないが、光熱費や食材費は上がっていくという状況も経営にダメージを与え、改善を迫られる病院が増えている。
医師の働き方改革も影響している。今年4月から、医師の時間外労働時間の上限が原則年960時間、月100時間未満に設定されたが、一方で病院にとっては業務の効率化が求められる。紙カルテの電子化や電話の自動応答サービス、診療予約の管理システムなど、さまざま存在するツールの導入を進めることで効率化はできるものの、経営が難しい状況にある医療機関や診療所ではそのコストを捻出するのは難しい。そうした際に、CFを活用するケースも出てきている。
成功の理由は「医療の公共性」
そのうえで、高い達成率を出せる理由は3つある。一つは、医療の公共性だ。「支援者へのアンケートを行うと、『病院は自分がいつお世話になるかわからない。だからこそ、共助の精神で支え合う必要がある』という考え方の人がほとんどです」(多田)
もう一つが、お礼を伝える方法として活用されていることだ。患者と担当医師は、定期的に顔を合わせる深い関係性となる。患者やその親族は、治療をしてもらった恩返しとして、直接お菓子などの物品を渡したいが、病院側は受け取ることができない。感謝を伝える機会としてCFは適当なタイミングなのだ。他の案件では全国から支援が集まるが、医療案件は医療機関のある地域を中心としてから支援が集まるのが特徴だ。