石膏ボードでおいしい米を育てる 一石二鳥の発想

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さまざまな建築に使われている石膏ボードだが、廃棄の際には所定の管理型最終処分場で処分する必要がある。土に埋めたときに石膏の硫酸カルシウムが微生物によって分解され、有毒な硫化水素に変化するためだ。処分には相応のコストがかかる。そこで、廃石膏を農業に使えないかと考えた。

硫酸カルシウムには硫黄が含まれている。近年、一等米の生産量が減っているが、猛暑による土壌還元の影響などで土中の硫黄が欠乏したためだと言われている。本来、日本の土には水稲の生育に欠かせない硫黄が多く含まれていたので、それを積極的に与える必要がなかったのだが、気候変動によって土壌の環境が変化してしまった。そこで、各地の水田では硫黄を含む石膏を投与しているのだが、それが廃石膏ボードと結びついた。

東急電鉄、東急、東急建設、東急リニューアル、土と野菜、日本土壌協会は3月、「廃石膏の有効活用と新たな資源循環の仕組みづくり」のための包括連携協定を締結した。そこに、石膏の専門家である吉野石膏が技術協力で加わり、廃石膏と液体肥料から土壌改良剤を作ることに成功したのだ。

吉野石膏では、廃石膏ボードを回収して再び石膏ボードにリサイクルする仕組みを整えているが、リサイクル率は全工場で約8〜10パーセントとのこと。廃石膏を土壌改良剤にして全国の水田に使えば、さらにリサイクルが進み、おいしいお米が食べられるという一石二鳥の効果が期待できる。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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