金ETFから10カ月連続で資金流出、欧州の不調が足かせ

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ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)の3月の保有残高はまたもや減少した。しかしながら、北米とアジアが堅調であったことから、世界的な資金流出は前月より縮小している。

WGCが発表した3月における世界のETFの金保有量は14トン減少し、3112トンとなった。これは4年以上ぶりの低水準で、2020年10月に記録した3915トンから5分の1以上減少した。一方で、先月の流出量は2月に報告された49トンを下回っている。

3月の資金流出額は8億2300万ドル(約1268億円)で、2月の29億ドル(約4432億円)を大きく下回った。

資金流出が続くにもかかわらず、運用資産総額(AUM)は2220億ドル(約33.9兆円)と21カ月ぶりのピークに達した。これは、金価格が月間で8%上昇し、当時の史上最高値を記録したおかげである。

金は上昇を続け、米国時間4月9日未明には1オンスあたり2363.50ドルの最高値を更新した。

北米とアジアが資金流入を牽引

北米では、投資家の金に対する投資意欲が高まり、同地域のETFは3億6000万ドル(約550億円)の資金流入を記録した。

この資金流入と前述した金価格の上昇により、同地域のAUMは1120億ドル(約17兆1000億円)に増加している。3月の金の現物流入量は約5トンで、累計の保有残高は1574トンとなった。

WGCは、「資金流入は主にオプション市場での活動によって引き起こされた」とし、「金価格の上昇が3月中旬にインザマネー(オプションの権利行使を行った場合の損益がプラスの状態)のコールの行使を引き起こし、多額の資金流入を生み出した」と指摘した。

また、「市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の3月の発言をハト派的と見ており、利回りとドルがともに低下したことから、FRB会合の前後にさらなる資金流入が起こった」と付け加えている。

アジアも好調だ。アジアのファンドは11カ月連続で資金流入を記録した。現物の流入量は3トン、流入額は2億1700万ドル(約331億円)で、保有残高は1億4800万トン、AUMは110億ドル(約1兆6000億円)に達した。

WGCは、「中国で金価格の上昇が投資家を惹きつけ、中国が再び資金流入を牽引した」とコメントし、日本でも資金流入を記録したと述べた。

欧州では流出が続く

しかし、欧州を拠点とするファンドは3月も資金流出に苦しんだ。現物の流出量は22トンとなり、その結果、総保有量は1331トンと51カ月ぶりの低水準となった。

金価格の上昇によりAUMは950億ドル(約14.5兆円)に増加したものの、流出額は14億ドル(約2140億円)だった。

WGCは、「イングランド銀行が3月の会合でハト派に傾き、国債利回りの低下とポンド安が起きた英国での流出が大部分を占めた」と述べた。

また、「金価格が急騰した際には、散発的な資金流入が見られたものの、金の勢いが一服した際には、資金流出が起こった」と付け加えている。

WGCによると、主要な中央銀行が利下げに向かったり、利下げを始めたりしたため、安全資産である金への需要も減少し、よりリスクが高い資産へ投資家の関心が集まったという。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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