実際のところ、銀河の磁場によって星形成がどのように阻害される可能性があるかについては、これまで十分に理解されていない。
米ビラノバ大学が主導する国際研究チームは、米国航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発した飛行機搭載天文台SOFIA(遠赤外線天文学成層圏天文台)を用いて、塵(固体微粒子)が大量に存在する銀河系の内部領域を観測した。
NASAから一部資金提供を受けたこの研究では、2020~2021年に実施した9回の飛行で遠赤外線観測データを収集した。SOFIAはすでに2022年9月に運用を終了している。
研究チームを率いたビラノバ大物理学部の学部長のデービッド・チャスによると、銀河中心は銀河系の中で他に類を見ない領域で、他に比べて密度が高くて速度が大きく、そこで磁場によって行われていることは他の領域では見られないという。
今回の地図は、銀河中心部の塵の相における磁場のまったく新しい様相であり、動力学と磁場との間の複雑な相互作用を示していると、チャスは説明する。これにより、銀河中心の動力学に磁場がどのような影響を与えているかに関する新たな理解を得ることが可能になるという。
銀河中心分子雲帯(CMZ)内部の低温の化学
銀河中心分子雲帯(CMZ)の内部は、分子を形成できるほどの低温のため、さまざまな種類の分子も存在する。探査はどのような方法で実行されたのか。
ビラノバ大によると、ボーイング747型航空機に口径2.5mの天体望遠鏡を搭載した、高度約1万4000mを飛行するSOFIAを主に用いて、銀河系中心部の磁場の地図を作成した。
観測プロジェクト「FIREPLACE(遠赤外線偏光による広範囲CMZ探査)」で作成されたこの地図は、SOFIAを用いて得られた過去最大規模のものだ。
南アフリカにあるMeerKAT低周波電波干渉計と欧州宇宙機関(ESA)のハーシェル宇宙天文台の多波長観測アーカイブデータを組み合わせて利用し、研究チームは銀河系最内部のこれまでで最も詳細な地図を作り上げた。