天文学誌The Astrophysical Journal Supplement Seriesに投稿された、今回の研究をまとめた論文によると、ウェッブ望遠鏡を用いた近傍銀河の観測は「星形成の初期段階と塵を多く含む星間物質に関する理解に大きな変革をもたらしている」という。研究チームは、ウェッブ望遠鏡の観測感度の向上と赤外波長域での観測能力が、今回のフィラメント構造の発見を促したと評価している。
今回の観測は、現在進行中の国際研究プロジェクト「PHANGS(近傍銀河の高解像度観測による物理学研究)」の一環として実施された。PHANGSには、主に欧米に拠点を置く研究者約150人が参加している。
論文の筆頭執筆者で、英オックスフォード大学天体物理学部の博士課程修了研究者のトーマス・ウィリアムズは、研究室で取材に応じ、大半の恒星は銀河円盤内で形成されることがわかっていると語った。だが、今回の最新の観測データから、星形成が銀河の渦巻構造の外側で数多く起きていることが明らかになったと、ウィリアムズは指摘している。
銀河スパーは極めて普遍的
ウィリアムズによると、スパーは銀河のシミュレーションでは以前から確認されていたが、現実の銀河で観測できるような感度が得られたのはこれが初めてだという。スパーはあらゆる種類の銀河に広く存在し、そのすべてで星形成が起きているらしいことが、今回の研究で実際に明らかになった。継続的に回転している銀河の中で、スパーがどのようにして構造を維持しているかについては、まだよくわかっていない。
スパーの構造は不変なのだろうか。
スパーはおそらくそれほど長くは存在せず、経時的に変化する。極めて過渡的なもので、銀河と同じ速さで移動しているに違いないと、ウィリアムズは答えた。