銅相場が高騰、1トン=1万2000ドルも視野に

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銅相場に強気の風が再び吹き始めた。パナマの大規模銅山の閉鎖など生産停止による供給不足に旺盛な需要が相まって、銅価格は1トン=9000ドル(約136万円)の大台に乗った。さらに22%上昇し、1万1000ドル(約166万円)の最高値を付ける可能性が高いとみられている。

シティ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなど複数の投資銀行が銅相場に参戦し、顧客に投資拡大を推奨している。

ただし、不確定要素もある。というのも2年前にも同じような状況が起こり、楽観的な見通しが広がった後に銅価格が急落したからだ。

2022年当時、ゴールドマン・サックスは翌23年中に銅価格が1トン=1万3000ドルに達するとの予測を発表して相場を先導したが、逆に7150ドルまで下落する結果となった。

その後、銅価格は着実に上昇を続け、直近では1トン=9200ドル(約139万円)を付けている。この上昇トレンドは、ブームというよりは着実にメルトアップするかたちで続くとみられる。

求められる新技術

ゴールドマン・サックスによる銅市場の最新分析では、供給の大幅な不足を受け、価格水準は2028年以降1トン=9900ドル(約150万円)まで上昇すると予想。このため、低品位鉱石から銅を回収することに焦点を絞った新しい銅生産技術の発見が急がれるとしている。

しかし、新たな加工方法によってさらに100万トンの銅が発見できたとしても「2030年に予想される500万トンの銅不足を解消するには不十分だ」とゴールドマン・サックスは指摘する。

モルガン・スタンレーは、銅市場の需給ファンダメンタルズがタイトなため、銅が選好順位の上位に浮上したとみる。「著しい供給不足の予想が加速し、銅は(2023年)8月以来初めて1トン=8700ドル(約132万円)を突破した。2024年第3四半期には1トン=1万200ドル(約154万円)を付けるとみている」と述べている。

投資銀行の中では最大の金強気派であったシティは、1トン=1万2000ドル(約181万円)到達には以前の予想よりも時間がかかるとの新たな予想を発表し、楽観的な見方を和らげた。

シティのグローバル・コモディティ・チームによると「マクロ経済環境が不安定化する可能性が高い中、供給不足が銅のアウトパフォームを支えることから、銅価格は今後2年間で1トン=1万2000ドル(年内に1トン=1万ドル)まで徐々に上昇すると予想される」という。

より規模の小さな銀行や証券会社も銅を支持しているが、米銀よりは慎重だ。

オランダの金融機関でグローバルに展開するINGは先月「銅の強気相場はまだ始まったばかりだ」と述べた。現在の価格上昇要因は供給のひっ迫であり、需要サイドが改善するにつれてさらに上昇するとみている。

オーストラリアのウィルソンズ・アドバイザリーは、資源セクター全体にとって厳しい年となっている中、銅はスポット価格が12カ月ぶりの高値に近づいており、突出した商品の1つとなっていると説明。「米連邦準備理事会(FRB)の利下げが年内に予想され、世界経済がソフトランディング(軟着陸)するシナリオが有力視される中、建設、消費財、機械など幅広い産業用途がある銅の需要は下支えされるはずだ」としている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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