実験期間中に心臓病で死亡した女性は、サプリメント摂取群では2621人だったのに対し、偽薬群では2420人だった。つまり、ビタミンDとカルシウムのサプリメントを摂取した群では、心臓病による死者が201人多かったのだ。
がんと心臓病の死者を合計すると、サプリメントを摂取した群の方が75人多かった。この研究では他のすべての死因の数も報告されているが、サプリメント群の方がわずかに死者数が多かった。
すなわち全般的に、ビタミンDやカルシウムのサプリメントを摂取しても何の効果も得られず、死亡率が低下することもなかったのだ。
では、なぜビタミンDやカルシウムのサプリメントががんの発症率を下げたり、心臓病の発症率を高めたりするのだろうか? まず強調しておきたいのは、これらのサプリメントにはまったく効果がなく、死亡率の差は単なる確率的な違いにすぎないという可能性も十分にあるということだ。ビタミンDががんの予防に役立つかもしれないと推測する研究も複数あるが、たとえ効果があったとしても非常に小さなものだ。今回の研究でサプリメント群の心臓病による死者が若干多かったことについては、カルシウムのサプリメントを長期間服用したことによって、冠動脈に石灰化が生じたのかもしれないと研究者は推測している。だが現時点では、これは仮説にすぎない。
結局のところ、欠乏症でない限り、ビタミンのサプリメントをとる必要はないだろう。それだけのお金をかけるとしたら、新鮮な果物を買った方が健康的だ。
最後に注記しておくが、サプリメントを常用しても効果がなく、ビタミンの過剰摂取は有害にもなりかねないが、ビタミン不足と思われる場合は医師に相談しよう。深刻なビタミン欠乏症は他の病気から生じている可能性もあり、医師の診断に従うのが一番だ。特定の症状や疾患に対する治療には、ビタミンが含まれることもある。
(forbes.com 原文)