従来のギャラリーでの体験を超えた、「アートと自然、受け継がれてきた遺産が交差する」独特なイベント、サウジアラビア西部マディーナ州のアルウラに古代から広がる景観を背景とするデザートXは、「アルウラ・アート・フェスティバル」の一環として開催されたもの。時代を超えてこの地に残るヘグラ遺跡のファサードと当時の王国の残響のなかで、芸術的イノベーションと、壮観な歴史的光景の融合を実現させた。
「In the Presence of Absence(「不在」の存在感)」をテーマとした今回は、第2回までのキュレーターを務めたラニーム・ファルシとネヴィル・ウェイクフィールドに加え、マヤ・エル・カリルとマルセロ・ダンタスが参加。20人近いアーティストたちが、合わせて15のインスタレーションを完成させた。
また、今回は初の試みとして、それ自体がアートの一部でもある景観のなか、来場者たちが物質的・非物質的な旅を経験できるようにするため、会場を3カ所にわけた。
荒涼としたハラット ウェイリッド(Harrat Uwayrid)と、かつての鉄道駅が保存されているアルマンシャ・プラザ(AlManshiyah Plaza)、その地名が「芸術の谷」を意味するワディ・アルファン(Wadi AlFann)で、複数の作品が披露された。
出展したのは、サラ・アリッサ、ヌジュード・アルスデイリ、ラナ・ハッダード、パスカル・ハシェム、 キムスジャ, カデール・アティア、イブラヒム・マハマなど。
一方、このエキシビションは芸術表現のためのプラットフォームとなるだけでなく、文化的な交流と地域の発展の間でカタリストの役割も果たしている。
ヘグラの遺産などを保護すると同時に、活気ある芸術の中心地としての地域の発展を目指すアルウラ王立委員会は、アートイベントを地元の経済、社会、文化的な活性化と、持続可能な観光業の実現につなげていきたい考えだ。
委員会のそうした戦略に基づき、デザートXには教育的プログラムも取り入れられている。現代アートと文化遺産への理解を深めることを目的に、地元コミュニティのメンバーと来場者たちが参加するワークショップやトークショーなども、開催された。
砂漠を会場とすることの意味
世界的に知られるアートイベントとなったこのビエンナーレは、歴史ある自然を背景にして、現代アートがいかに人々に体験され、鑑賞されるものになり得るかということへの新たな理解をもたらしてきた。革新的アートについて発信するイベントとして、世界中から数多くの来場者たちを呼び込むことにより、アルウラの文化的景観にも大きく貢献している。
さらに、現代アート作品の展示にとどまることなく、歴史的な文明と現代社会、地域の伝統とグローバルなストーリー、目に見える自然の美と見えない人間の想像力の領域といういくつもの「点と点とをつなぐ」ための「文化的オデッセイ」を提供すると同時に、地理的、時間的な境界を超越し得るアートの力を証明するイベントにもなったとされている。
(forbes.com 原文)