アート

2024.03.23 12:00

急成長するインドの現代アートシーン、支えるのは「草の根」の力

“Jayanti & Labour ” Vikrant Bhise(C)instagram @vikrantbhise_artist

“Jayanti & Labour ” Vikrant Bhise(C)instagram @vikrantbhise_artist

インドのナレンドラ・モディ首相は2024年1月、自身のYouTubeチャンネルに投稿した動画のなかで初めて、自国の現代アートシーンについて語った。

デリーにあるムガル帝国時代の城塞、レッド フォートで前年12月8~15日に開催された「インド芸術・建築・デザイン・ビエンナーレ(India Art, Architecture and Design Biennale)」について「さまざまな遺産と活気ある文化をたたえるもの」だと称賛。さらに自身のウェブサイトで、会場を訪れたときの写真をシェアした。

だが、首相就任からおよそ10年、モディは芸術振興に対する財政面での支援を、ほとんど行ってこなかった。総選挙が行われる年の初めに見せたこうした行動は、一部の人にとっては「選挙キャンペーン」以外の何物でもない。

デリーを拠点に活動するアーティストのヴィクラント・ビセも、そう考える1人だ。公的な支援を受けることなく発展してきたインドの芸術産業は「完全に草の根的なもの」であり、活気ある現在の状況は、アーティストたちの意欲に対する賛辞だと語る。

インドのアート市場は、特にここ5年の間に目覚ましい成長を遂げた。それをよく表しているのが、2月上旬に行われた南アジア最大規模のアートイベント、インディア・アート・フェア(IAF)だ。

15回目を迎え、国内の109のギャラリーが出品した今回のこのイベントでは、カーペンターズ・ワークショップ・ギャラリー(Carpenters Workshop Gallery)の売上高がIAF史上最高額となる161万5000ドル(約2億4200万円)に達した。

IAFは、長年にわたって自らの活動が文化的に見過ごされていると感じてきたインドのアーティストたちにとって、 胸躍るような時代の到来を象徴するものだとされている。

前出のビセは、アートやクリエイティブな活動のための時間を作るのは、インドでは容易なことではないと語る。「1日の労働時間が大抵15時間のインドでは、自分のための時間がほとんどない」という。

そのビセは今回のIAFに、アナント・アート・ギャラリー(Anant Art Gallery)を通じて『Rise of Protest』と『Quest for Justice』シリーズの作品を出品した。
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編集=木内涼子

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