激しく浸食
今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、米SETI研究所とNASAエイムズ研究センター火星研究所に所属する惑星科学者のパスカル・リーは「2023年に氷河の跡を発見した場所の地質を調査中に、そこが激しく浸食された巨大な火山の内部であることに気づいた」と話す。かつては溶岩が溜まっていたと思われる、崩壊した噴火口や、火山周辺に溶岩が流れた跡があるのを、研究チームは発見した。ノクティス山は、斜面が約225kmにわたって広がっており、マリネリス峡谷系の西にある「ノクティス・ラビリントス(夜の迷宮)」と呼ばれる地域の東部に位置する。
氷河の発見
ノクティス山が発見されたのと同じ地域で、今回と同じ研究チームが2023年に氷河の跡を発見した。これは氷河の上で形成された塩で、クレバス(深い割れ目)などの氷河の形状が保存されている。このことは、最近まで火星の表層に水の氷が存在していたこと、さらには、火星の表面のすぐ下に氷がまだ存在している可能性があることを示唆している。巨大火山と氷河跡の両方の発見により、火星のノクティス・ラビリントス地域は、未来の火星探査車と有人探査のためのNASAのやることリストにただちに記載されることになる。リーは「形成されてから長い年月を経て、激しく浸食された古代の火山を対象に、その内部のさまざまな領域で徒歩や自動車、飛行機などによって調査を行い、サンプルを採取し、年代を測定すれば、火星の長年にわたる進化を詳細に調べることができるだろう」と説明し、ノクティス山のことを「非常に心が躍る【略】宇宙生物学と生命の痕跡探しにとって最高の場所」と表現した。
ノクティス山の発見には、NASAのマリナー9号、バイキング(周回機)1号と2号、マーズ・グローバル・サーベイヤー、マーズ・オデッセイ、マーズ・リコネッサンス・オービターの各ミッションと、ESAのマーズ・エクスプレス・ミッションの観測データが用いられた。
(forbes.com 原文)