米シンクタンクのブルッキングス研究所によれば、米国におけるミドルクラスとは通常「経済的資源」「教育・職業」「立ち居振る舞い・自己認識・考え方」という3つのカテゴリーのいずれかを反映している。
2022年に行われたギャラップの調査では、米国成人のおよそ半数がミドルクラスの一員だと自認していることがわかった。厳密には、38%が自身を「ミドルクラス」、14%が「アッパーミドルクラス」とみなしていた。
ピュー・リサーチ・センターは、所得額が全米中央値の3分の2~2倍に該当する層を「ミドルクラス」と定義している。一般的には、社会経済階層においてワーキングクラス(労働者階級)とアッパークラス(上流階級)の間に収まる人がミドルクラスとみなされる。
大学の学位を取得した人、持ち家のある人、子どもを大学に進学させられる人、可処分所得のうち自由に使える資金(自由裁量所得)が多い人は、自身をミドルクラスと認識している。
また、ミドルクラスの自認は職業からも生まれる。たとえば、ホワイトカラーの会社員、管理職、起業家(ブルーカラー分野の会社も含む)、公務員など、安定した収入があり、雇用保障、年金、充実した福利厚生を受けられる職業がそれにあたる。
ミドルクラスの職業
ミドルクラスの職業には一般に、社会で必要とされる特定の専門知識・技能が求められる。そうした分野への参入には障壁があり、中核となる能力、職に関係する学位、資格、業界での技能習得経験などが必要とされる。ミドルクラスの人が就くタイプの職業には、少なくとも準学士号、たいていは学士号以上が必要となる。下層階級向けの職業に比べて収入は良いが、上位1%の富裕層の報酬には届かない。
具体的には、正看護師、会計士、電気技師、教師、人材採用担当者、人事担当者、警察官、配管工、シェフなどだ。
ミドルクラスとされる収入は?
米国では、過去50年間でミドルクラスは縮小している。それより上層、または下層のいずれかの所得範囲に該当する人が増えているからだ。ミドルクラスの人口は1971年には61%だったが、2021年には50%に減少した。一方、政府統計を分析したピュー・リサーチ・センターのデータによれば、高所得の富裕層は25%から29%に増加した。
米国勢調査局によれば、2021年の全世帯所得中央値(世帯人数に基づいて調整済み)は7万784ドル(現行レートで約1060万円)だった。ミドルクラスの所得範囲をこの3分の2~2倍と考えるならば、額面にして4万7189ドル~14万1568ドル(約708万~2130万円)となる。
収入以外の要件
ミドルクラスの要件をめぐる議論では、社会的・文化的資本が考慮されていない傾向がある。米紙ワシントン・ポストの調査では、米国成人のおよそ10人に9人が、ミドルクラスとみなされるためには経済的な保障や安定性において一定の水準を満たしていなければならないと考えていることがわかった。指標としては、安定した雇用、貯蓄能力、臨時出費が1000ドル(約15万円)あっても経済的に破綻しないこと、医療保険を利用できること、比較的楽に定年退職できることなどが挙げられる。
そのほか、持ち家があることや有給の病気休暇があることをミドルクラスの基準と考えている人もいる。
(forbes.com 原文)