宇宙

2024.03.01

原子が「あり得ない」対称パターンに配置された準結晶、微小隕石から新たに発見

イタリア南部で採取された天然のAl-Cu-Fe-Si準結晶を含む微小隕石(Agrosì et al. 2024/Communications Earth & Environment Licensed under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

準結晶は、結晶性物質の規則に反する風変わりな物質だ。結晶では、3次元的に無限に繰り返される原子の構造パターン内に原子が配置されている。1980年代に最初に発見された準結晶は、古典的な結晶学の法則では、あり得ないと長年考えられていた。他の鉱物と同様に独自の化学式を持つが、原子の構造パターンが周期的でなく(5回対称などの)「特異な」対称性の配置になっているからだ。

準結晶の形成には、地球上にほとんど存在しない超高温高圧条件が不可欠となる。以前は実験室条件下でのみ観察されていたが2011年、ハティルカ隕石から採取されたサンプルに含まれている天然の準結晶が初めて発見された。それ以降、核爆発の衝撃波を受けた岩石や、強力な放電にさらされた砂質堆積物などに、人為的に生成された準結晶が含まれていたことが報告されている。



今回の最新研究では、イタリアの研究チームが、20年以上前に回収された地球外物質から新しいタイプの準結晶を発見したと発表した。

2002年、イタリア南部のガリリョーネ山を散策中の鉱物収集家が、奇妙な金属鉱物粒子を見つけた。その正体がわからなかった収集家は、イタリアのバーリ大学にサンプルを送り、分析を依頼した。

物質を特定するための化学分析の結果は、鉄、ニッケル、アルミナ(酸化アルミニウム)、銅、ケイ素などが多く含まれていることを示していた。これは、金属鉱物粒子の正体は、地球外物質に典型的に見られる鉄ニッケル合金を含有する微小隕石(流星塵)であることを示唆している。

この発見に興味をそそられた研究チームは、微小隕石に含まれる鉱物相の構造特性を突き止めるために、さらなる分析を行った。その結果、通常の結晶に見られる対称性はなく、ハティルカ隕石から最初に回収された物質に似た構造パターンがあることが明らかになった。

原子が「あり得ない」対称パターンに配置された準結晶の構造を、電子後方散乱回折法で可視化した画像(Agrosì et al. 2024/Communications Earth & Environment Licensed under CC BY 4.0)

原子が「あり得ない」対称パターンに配置された準結晶の構造を電子後方散乱回折法で可視化した画像(Agrosì et al. 2024/Communications Earth & Environment Licensed under CC BY 4.0

準結晶は、宇宙空間での小惑星同士の衝突や地球への隕石衝突の際に発生するような極限条件下でのみ形成される一方、これまで考えられていたよりも多く見られることが、ハティルカ隕石と今回の2番目の発見によって裏づけられた。また、ハティルカ隕石やガリリョーネの微小隕石の形成年代は、少なくとも数億年前、もしくは太陽系の最初期までさかのぼる可能性もあることから、準結晶の原子構造は長期間にわたって安定した状態を保つことが示唆される。

今回の研究をまとめた論文「A naturally occurring Al-Cu-Fe-Si quasicrystal in a micrometeorite from southern Italy」は科学誌Communications Earth & Environmentに掲載された。論文はここで閲覧できる。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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