「静かな退職」はアメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリー氏が提唱した言葉だ。近年アメリカでも、Z世代を中心にそうした人たちが増えているという。日本では昔から、『釣りバカ日誌』のハマちゃんに代表される「ぐーたら社員」がいた。猛烈社員のアンチテーゼとして、ある意味、理想の生き方だったが、今の企業には働かない社員に給料を支払う余裕はない。
なぜそうした人が増えたのか、GPTW Japan(働きがいのある会社研究所)が企業に勤める男女6998人を対象に調査を実施した。その結果、静かな退職を選択している人の約3割が34歳以下の若手社員であり、理由のほぼ5割が「プライベートな時間が確保できる」からだった。
問題は、最初からそのツモリで入社したわけではないという点だ。約7割の人は入社後に静かな退職を決めている。理由のトップは「仕事よりプライベートを優先したいと思うようになったから」で、続いて「努力しても報われない」。正当に評価されない、給与に反映しない、という不満からヤル気をなくしたというわけだ。
会社側が何をすれば働き方を変えられるかを聞くと、約4割は「環境で変化があっても働き方は変わらない」と答え、もう元に戻る気も失っている。ただ、「努力が正当に評価され報酬に反映される仕組み」が用意されたらと答えた人が3割近く、「昇進・昇格の基準が明確になり透明性のある評価制度」ができればと答えた人も約2.5割いたことを考えると、積極的に働きたい気持ちが残っている人もいることがわかる。
この調査では、静かな退職者が全体に占める割合は示されていないが、GPTW Japan代表の荒川陽子氏は、今後増加する危機感を覚えたと話している。憂慮すべきは、「希望に満ちあふれて入社した」人たちが静かな退職を選んでしまう環境であり、成長の余地が大きい若手が多い点だと荒川氏は言う。そうならないために「多様な価値観を受容し、プライベートの充実を確保できる働きやすさは担保しつつ、やりがいを喚起する」ことが大切だとしている。
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