バイオ

2024.02.28

ロボットを躍り食い? 可食ロボットの哲学的課題

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動いている状態で食べられるロボットを使って、動物を生きたまま食べる体験を再現する研究が行われている。一見して悪趣味な美食家の戯れかと思ったが、じつは人の食行動や心理的影響、さらには食育におけるバイオエシカルへの理解や哲学的論議を深める「ヒューマン・エディブル・ロボット・インタラクション」(HERI)研究のためのものだった。

電気通信大学と大阪大学は、もぐもぐと噛んで食べられるロボット「可食ロボット」を開発した。食べられる素材だけを使って、動物のように動いた状態のまま食べることができる。驚くべきテクノロジーだが、その目的は、動いているものを食べたときの知覚や食感の変化を調べることにある。

可食ロボットは、おもにゼラチンと砂糖で作られたグミのようなもので、口に入れやすいスティック状になっている。これを空気圧で動かす。実験では、動いている状態と、動いていない状態とで被験者に食べ比べてもらった。

その結果、まず見た目は、縦方向よりも横方向に動くほうが生きている感覚を強く感じられた。動いている状態で食べたときに、ロボットに対して、知性、感情、生き物らしさ、罪悪感、新鮮さが強く感じられた。食感をオノマトペで言い表してもらったところ、動いてるかいないかで明らかに表現が違った。つまり、動いているかいないかで、感覚が大きく異なることがわかった。

研究チームが提唱するHERIという新しい概念には、大きな可能性があるという。躍り食いに代表される食体験といった娯楽的要素もあるが、「口腔刺激を通じた脳活動の促進」への応用、また「人の食行動における動物的要素、動く物体が私たちの食欲や食行動にどのような影響を与えるか」、さらには食育において生命とは何かを考える哲学的議論を広げる機会にもなるということだ。

しかも、これまでの人とロボットの関係性や、人がロボットに抱く気持ちや態度がHERIによって変化する可能性もあり、じつに奥深い。「ロボットは生きたまま食うとうまい」なんて変な誤解を招かないことを祈る。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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