ウィリアム皇太子の声明は「中東における紛争で、恐ろしい人的犠牲が出ていることを深く憂慮している。あまりにも大勢が殺されている」とし「一刻も早く」戦闘を終結させるよう求めている。また、ガザでは人道支援が「切実に必要」であり、イスラム組織ハマスに拘束されている人質の返還も重要だと述べている。
ウィリアム皇太子は20日、ロンドンの英国赤十字社を訪問。ケンジントン宮殿によると、中東の紛争における「人的影響について詳しく話を聞く」ため、今後数週間以内にガザで人道支援を行っている別の援助関係者とも面会する。
また、今月末にはユダヤ教のシナゴーグ(礼拝堂)を訪問する予定もある。
父チャールズ国王は昨年10月、イスラエルとハマスの戦闘で「胸が張り裂けるような人命の損失」が起きていると語り、異なる信仰をもつ人々の平和的共存を呼びかけていた。
英国外務省のウェブサイトでは、英国とイスラエル関係を「固い友好国であり、自然な同盟国」と表現している。
英王室では政治的発言や国際紛争への介入を控えるのが長年の通例だったが、近年はウィリアム皇太子やヘンリー王子に例外的な言動が見受けられる。皇太子とキャサリン妃は2022年、ロシアのウクライナ侵攻後に「未来のため勇敢に戦うウクライナの大統領と全国民を支持する」と表明した。
皇太子は2019年にも、翌年1月にブレグジット(英国のEU離脱)を控えた国内の農家に「心配はあるか」と尋ね、物議を醸した。ヘンリー王子とメーガン妃は2020年、英王室を離れて米国に移住した直後、その年に行われる米大統領選について「生涯で最も重要な選挙」だとして米国人に投票を呼びかけた。
一方、2022年に亡くなるまで70年以上にわたって英国を統治した故エリザベス女王は、政治的な領域に足を踏み入れることがほとんどなく「沈黙のエリザベス」と呼ばれていた。
ウィリアム皇太子の声明に先立ち、米国は19日、ガザ地区における一時停戦を求める決議案を国連安全保障理事会に提出した。ガザ地区での戦闘を受けて130万人が避難している南部ラファへのイスラエルの地上侵攻に警告を発する内容だ。これまで米国はガザ停戦を求める国連決議を一貫して拒否しており、大きな方向転換といえる。ジョー・バイデン大統領は16日、ハマスに拘束されている人質が解放されるまでの「一時停戦」の必要性を強調していた。
昨年10月以降のガザ地区におけるパレスチナ人死者数は、ガザ保健省の19日の発表によれば、2万9092人に上っている。昨年10月7日のハマスの攻撃では、イスラエル人1200人余が殺害され、240人以上が人質として連れ去られた。
(forbes.com 原文)