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2024.02.14 11:30

銅の価格、さらに上昇見込み 世界の製造業回復と中国のグリーン化で

銅は産業のグリーン転換に必要な金属

しかし銅の魅力は、単なる市場投機の産物ではなく、グリーン転換の推進に不可欠なその役割に根ざしたものだ。エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)の報告書によると、2023年には中国のGDPに対するクリーンエネルギー技術(EV製造と輸出、鉄道交通、太陽光パネルやバッテリーなど含む)の貢献(投資と生産、サービスを含む)が11兆4000億元(約236兆4700億円)に達し、他のすべてのセクターを上回ったという。2023年における中国のクリーンエネルギー技術への投資は6兆3000億元(約132兆円)に上るが、これはスイスやトルコのGDPに匹敵する額だ。

鉱業セクターはしばしば環境をめぐる議論の矢面に立たされるが、銅は、風力や太陽光といった従来の移行的テクノロジーに比べて有利な投資対象であると筆者は考える。2023年のS&Pグローバルのクリーンエネルギー指数が前年比で21%減少した一方で、銅価格の終値が1.2%の微増だったことを考えると、これは特筆すべきことだ。

加えて世界経済は、多くの人々が懸念したよりも安定しているようだ。インフレ率は下落傾向にあり、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、遅くとも2024年半ばには利下げに踏み切るだろう。こうした経済環境は、自動車や消費財製造といった、銅に依存する産業にとって吉報だ。

世界の製造業は回復傾向

さらに、世界の製造業セクターも回復の兆しを示している。JPモルガンのグローバル製造業PMIは、1月に基準値の50.0に到達し、16カ月連続で続いた50未満の数値に終止符を打った。これは、銅の主要な利用者である、世界の製造業の安定化を示唆するものだ(グローバル製造業PMIとコモディティの短期需要の関係について、筆者による解説はこちらをご覧いただきたい)。

米国の製造業は2024年、新たな楽観とともにスタートを切り、需要は上向きだ。S&Pグローバルの米国製造業PMIは、1月に50.7まで上昇し、2022年9月以来、最も高い水準となった。ポジティブな転換の要因には、生産高の増加および労働者数の増加とともに、インフレの緩和と、金融状況の改善が挙げられる。

一方で、米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業PMIは、米国の製造業が依然として緊縮モードにあることを示しているが、傾向はごく弱いものだ。1月のISM製造業PMIは49.1であり、2023年12月の47.1から上昇したものの、15カ月連続で50.0を下回った。

銅は単なる金属ではない

経済の回復、重要セクターにおける需要の急成長、世界の製造業の復調といった好材料が重なり、2024年の銅の未来は明るい。

銅は、歴史的に重要な素材というだけでなく、経済と技術の発展を次なるフェーズへと飛躍させる上で不可欠な素材であると筆者は確信している。こうした意味で、銅は単なるコモディティではなく、グローバルな経済成長の新時代を創造する触媒なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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