アジア

2024.02.07 09:30

中国は「不動産問題への対応」を間違い続ける、経済全体に影を落とす

安井克至
その後、中国政府は3つ目の過ちを犯した。不動産開発企業の経営破綻が拡大する中、増大する不良債権から金融システムを守ることに失敗した。恒大集団や他の開発企業に疑いの目が向けられただけでなく、不動産開発企業が完成できなくなったアパートの前払いとして住宅ローンを組んだ住宅購入者がその支払いを拒否した。

これらの問題は、銀行貸出の流れを鈍らせ、それにともなって経済活動のペースを鈍化させることになった。この部門の不確実性が高まり、そして突然借入が難しくなったため、不動産の価値は下落し、中国の家計の資産、ひいては消費者の消費意欲に深刻な打撃を与えた。政府が2021年に迅速に行動し、例えば金融市場に資金を注入したり、販売済みのアパートを完成させるための支援を保証したりしていれば、このような影響を最小限に抑えることができたはずだ。だが政府は躊躇し、問題が次々と重なる事態となった。

当局はようやく対応する必要があると認識したが、その取り組みは不十分だった。企業が販売済みのアパートを完成させ、所有者が住宅ローンの支払いを再開するよう、銀行に融資を促してきた。銀行は消極的な姿勢を示しているが、少なくともそれは政府が不動産開発企業を支援できなかったからだ。

政府はまた、3500億元(約7兆3090億円)を投じて手ごろな価格の住宅を建設する計画を打ち出したが、かつて中国経済全体の3分の1近くを占めていたこの分野にしては実に小さな額だ。政府はまた、北京と上海で住宅を購入する際の頭金に関する規制も緩和した。このような動きは、約3年前に問題が顕在化した時であれば問題を食い止められたかもしれない。だが、3年間躊躇していたために圧力はさらに増し、昨年12月の数字が示すように、これらの取り組みは実を結んでいない。

今後に目を向けたとき、明らかになっていることが3つある。まず1つは、状況を改善するために中国政府は大胆な措置を取る必要があり、対応は早ければ早いほどよいということだ。また、当局が大胆かつ迅速に行動したとしても、不動産部門の落ち込みを食い止めるには時間がかかり、事態を好転させるにはさらに時間がかかる。そして、中国経済の見通しは不動産部門が安定するまで、おそらくその後もしばらくの間は厳しいだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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