欧州

2024.01.30 10:30

欧州は「トランプ2期目」にどう備えるべきか

この問題は、ウクライナへの資金援助パッケージの合意を目指して今週開かれるEU首脳会議で決定的な局面を迎えるかもしれない。ハンガリーはこの支援策を妨害してきたが、欧州議会ではかなり大きなグループがEU条約第7条に基づいてハンガリーから投票権を剥奪することを求めており、欧州の首脳の間でも議会ほど大きくはないものの、それに賛成するグループがある。

ロシアが敵対的な姿勢を強めるのに備え、EUができることはほかにもある。ベラルーシの反体制派への支援を大幅に強化すること。ロシアに対して実効的な貿易・金融制裁を科すこと。ロシア人の資産を保有するEU周辺の国(具体的に言えば英国とスイスだ)の銀行に対して強力な制裁を科すこと。ロシア人のEU域内への入境や域内での移動を厳重に管理することなどだ。

戦争準備についてはひとまず置き、トランプ2期目が現実化した場合の欧州への影響に話を戻そう。筆者の考えでは、トランプの大統領復帰で真に懸念されるのは、彼の人格の異様さもさることながら、その任期中の米国が、民主主義国家としての米国の長い歴史においてかつて見られなかったほど、また「ザ・フェデラリスト」(編集注:米国の建国の父たちが連邦憲法の制定の必要性を訴えた論文集)ですら十分に想定されていなかったほど、法の支配と民主主義の精神を放棄した国として特徴づけられることになるのではないかということだ。

こうした見方が米国人や世界の人々の間で広まれば、世界経済での米国企業の役割や、米国資産の安全性、あるいは超大国にして国際機関の良識ある「ゴッドファーザー」としての米国の役割に重大な影響を及ぼすだろう。米国に対する敬意も信頼も、そして恐れも低下するこのシナリオでは、欧州は国際秩序を支える責務を負い、そうする機会を得ることにもなる。

実際、世界での欧州の役割(リベラルな価値観と民主主義の原則、文化的な多様性が尊重される模範的な場所として)は、もし欧州の指導者がこの課題に取り組み、投資するとすれば、より明確になるはずだ。これに関して、欧州でこれまでなおざりにされてきた機会の1つは「資本市場同盟」だ。欧州の政治家の間ではこうしたプロジェクトは票にならないのかもしれないが、欧州はユーロ圏危機の後始末で不十分な点がある。欧州の金融システムは「安全資産」とリスク資本(自己資本)を積み増す必要があるのだ。半面、欧州の資本市場が深く統合されれば、欧州は地政学的に格段に地位を高められるだろうし「戦略的自律」の財政面もさらに強靭化できるだろう。

最後に、欧州の政治家、そして有権者は、米国での根強いトランプ人気の裏にある理由を検討し、欧州が同じ過ちを繰り返さないようにする必要があるということも指摘しておきたい(とくにドイツでは最近、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の幹部らとオーストリアのファシストが移民の大量追放について謀議したとされ、物議を醸している)。関連する問題としては、政治が市井の人々から切り離され「エリート」によって運営されているという感覚、高い生活コスト、ソーシャルメディアによる政治システムの汚染、民主主義についての教育を強化する必要性などが思い浮かぶ。これらについてはまた別の機会に論じることになるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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